あす甲子園開幕 長崎商 5年ぶり夢舞台へ ダブルエース軸の堅守 打線も強力

チーム浮沈のカギを握る長崎商の城戸(左)と田村のダブルエース=長崎市、県営ビッグNスタジアム

 第103回全国高校野球選手権大会は9日、兵庫県西宮市の甲子園球場に49校が出場して開幕する。長崎大会で5年ぶり8度目の優勝を飾った長崎商は、第4日の第1試合(12日8時)の1回戦で熊本工と対戦。憧れの夏舞台に挑むチームの意気込みを紹介する。

■粘り欠いた秋
 長崎大会はサヨナラ二つを含めて4試合で逆転勝ちを収めた。第1シード大崎との決勝も九回2死無走者から追いつき、延長で勝ち越しと粘り腰を披露して頂点に立ったチーム。だが、今季は正反対の勝負弱さが出たスタートだった。昨秋の県大会準々決勝。長崎日大に延長十一回で逆転サヨナラ負けして、春の甲子園への道を閉ざした。随所に強さはあるものの、どこかもったいない。そんな印象だった。
 厳しい冬の練習を乗り越えた選手たちに“どこか”の部分で変化が見られたのは春。西口監督が日誌を振り返って強調する。「ターニングポイントは3月29日。何か物足りなさを感じていたチームに対して、原点に返ってあえて厳しい言葉を掛けた。その日から様子ががらりと変わった」
 普段は温厚な指揮官がこの日、円陣の中で語気を強めた。「集合するときは帽子を取れ。ケツを締めて、かかとをそろえて立て。全力疾走もしっかりとやれ」。力や技術ではない。目に見えないところで試合を左右する気持ちや意識の部分。そこを高めていくきっかけをつくりたかった。ここからチームは快進撃。開催中だった春の県大会を制して、続くNHK杯も優勝。自信と勢いをつけて本番に臨んだ。

■全44回無失策
 そうした精神的な成長に加え、夏制覇の原動力になったのは、全5試合44回で無失策を貫いた堅守。澤山、横田、大坪らの内野陣を中心に無難にアウトを重ねた。劣勢でも決して崩れずに食らいつき、簡単には相手に流れを渡さなかった。それが終盤に勝ちきる結果につながった。
 投手陣の柱は上手投げの城戸と横手投げの田村の両右腕。城戸は威力ある直球に多彩な変化を織り交ぜる。特にスプリットに磨きをかけて長崎大会は投球回数20を上回る奪三振22を記録。与四死球4と制球も安定していた。田村は強気の内角球で死球を与える場面もあったが、シンカーやスライダーを巧みに出し入れしていく。捕手古木の好リードが欠かせない。
 例年「守りの長商」のイメージが強い中、今季は打線も力強さがある。長崎大会のチーム打率は2割9分3厘と3割には届かなかったが、各試合で打順を微修正して打ち負けなかった。打率4割超の横田、大町を軸に、身長194センチ、体重96キロの鬼塚や外野手も兼ねる城戸、松井の大型選手のほか、宮城、大坪らの鋭い一振りに注目だ。

■歓喜の校歌を
 九州最古の商業高校で夏の全国初出場は1925(大正14)年と伝統を誇るチームだが、甲子園での勝利は4強入りした52(昭和27)年夏から遠ざかっている。前回の2016(平成28)年夏も山梨学院に3-5で初戦敗退。今回こそ、昨年コロナ禍で涙に暮れた先輩をはじめ、学校を巣立ってきた2万9094人の卒業生らへ歓喜の校歌を届けたい。
 69年ぶりの白星を懸けた1回戦は、今回で春夏計44度目の甲子園となる熊本工との九州対決。夏は3度の準V経験もある難敵だが、7月初旬の練習試合は長崎商が勝っており、悪い感覚はない。103回目の夏の聖地で、互いに歴史を刻んできた「CHOSHO」と「熊工」のユニホームによる熱戦が期待される。
 主将の青山は「一つでも多く試合ができるように、積み上げてきたことを信じて、最後まで粘り強い長商野球を展開したい」と闘志を燃やしている。

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