#あちこちのすずさん 農家への買い出し、洗い物の手伝いは小川で2人並んで  

(男性・89歳)

 食料の買い出しに農家によく行きました。買い出しの時には、小田原の新鮮な魚を持参して、大変喜ばれました。

 買い出し先の農家には、布の端切れをリボン代わりにして髪を二つに結んだ、丸顔の可愛い女の子がいました。

 当時、農家には水道がなく、飲み水は馬ぞりに桶を積んで水汲みに行き、台所のそばを流れる小川で二人並んで、お椀やどんぶりを洗いました。ヘッツイサン(かまど)の灰が洗剤、縄を巻いたものがたわしの代わりでした。

 食器を洗う川の少し下流には、里芋を洗う小さな水車(芋車)があり、里芋を置いておくと水流で皮がむけ、綺麗に白くなります。それもお昼のおかずの一品となりました。

 富士山の見える山の頂で、スイカを根株にぶつけて割って食べました。

 その女の子の両親から「将来、嫁にもらって」と話があり、実現はしませんでしたが、当時13歳の私は嬉しかったことを覚えています。

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 戦時下の日常を生きる女性を描いたアニメ映画「この世界の片隅に」(2016年)の主人公、すずさんのような人たちを探し、つなげていく「#あちこちのすずさん」キャンペーン。読者から寄せられた戦争体験のエピソードを、ことしも紹介していきます。

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