東京五輪が8日に閉幕した。新型コロナウイルスによる史上初の1年延期に始まり、大会組織委員会の会長交代、開会式担当者の相次ぐ辞任や解任…と始まる前からドタバタが続いた。競技開始後も、記者やカメラマンはコロナ禍で異例続きの取材現場に四苦八苦。そんな中でつかんだウラ情報を2回に分けて一挙公開! 前編では五輪レジェンドの「サプライズ登場」の舞台裏をお届けする。
【五輪担当記者・座談会(前編)】
記者A 本当にいろいろあったよね。開幕直前に楽曲担当の小山田圭吾が過去の〝いじめ自慢〟で辞任、演出担当で元お笑い芸人の小林賢太郎氏も問題発言で電撃解任。今思うとちょっと異常な開会式だったな。
記者B 国立競技場の周辺には中止を求める大勢の有志が集結。五輪の雰囲気を味わう見物人の歓声と、デモ参加者の怒号が入り交じるカオスな状態…。あれは一生、忘れないでしょうね。
記者C そういえばB先輩は開会式の後に終電を逃しましたね。
B 国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長のせいだよ。伝説の〝13分スピーチ〟のせいで終了時刻が押しちゃって。本来は終了と同時に競技場を出れば間に合うはずだったのに…。話が長い〝バッハ校長〟にはタクシー代までぼったくられた感じだよ。
A 各競技会場の取材で気になったことは?
C ソフトボールで日本の開幕戦が行われた福島県営あづま球場では、周辺にクマが出ると話題になりました。地元住民は「よく出ますよ」と話していて、米国のケン・エリクセン監督も「クマが出ないか、みんなで辺りを見ていた」と警戒していました。
B 別の会場の入り口で荷物検査を受けていたら、コカ・コーラ以外の製品を持ち込むか?と聞かれ、その場合はラベルをはがすように指示されました。テロ対策のはずの荷物チェックなのに〝スポンサー対策〟と化していましたよ。
A そういう事例は過去の五輪でもあったみたいだけど、今回はコロナ禍でスポンサーが巨額の損害を受けている。いつも以上にスポンサーへの〝忖度〟が目立ったのは確かだね。某競技では五輪に向けて新しいシステムの導入を検討していたけど、その開発企業が最上位スポンサーとライバル関係にあったため断念したと聞いたよ。
C 明るい話題にしましょう! 金メダルで最も印象的だったシーンは?
A 間違いなくレスリング最終日だね。
B 須崎優衣、乙黒拓斗のダブル金ですね?
A そうなんだけど、実は2人以上に関係者の注目を集めた人がいた。五輪4連覇のレジェンド・伊調馨さんだよ。
C あ、須崎選手の表彰式でブーケのプレゼンター役としてサプライズ登場しましたね。
A そうそう。記者席から試合を見ていたら、着物姿の伊調さんが通路から現れて関係者と談笑していたんだ。あまりのオーラに周囲のボランティアもすぐに気づいてザワザワと…。サプライズなのに明らかに目立ち過ぎてたから、本人に「これはバレますよ」って言ったけど「そうですかね」って。自分がどれだけ大物かをイマイチ分かっていない謙虚さも素敵でさ。
B で、バレなかったんですか。
A いや、案の定、テレビに抜かれてた(笑い)。すぐにネットで「伊調馨、プレゼンター役で登場か」ってネタバレ。そりゃ、そうなるよね。
C 伊調さんには開会式の聖火リレー最終ランナーを望む声もありましたからね。そもそも今回選ばれた経緯は?
A 当初はファン向けのイベントに出演予定だったけど、五輪が無観客開催になって中止になった。そこで、世界のレスリング界の顔である伊調に何らかの形で表舞台に立ってもらいたいと願った日本協会の富山英明副会長らが世界レスリング連合に打診。すると「伊調はレスリング界の誇りだ」と即OKして実現したんだって。
B 着物が素晴らしかったですね。
A あれは、2016年に国民栄誉賞を受賞した際に贈られた帯と自前の振り袖だとか。大役を打診され「せっかくなので日本の文化を伝えたい」と着物を選択したみたい。
C しびれるセリフですね~。どこかのKY市長に見習わせたいですね。
A プレゼンターを終えた伊調さんに「表彰台を下から見た感想は?」と聞くと「また違った景色で素敵でした」って。テッペンからの景色しか知らないレジェンドの言葉だけに重みがあったね。