球界の大先輩が〝中田翔放出説〟に待った! 大下剛史氏「どんな減給受けても日本ハムに残してもらえ」

日本ハム・中田翔

翔よ、もう一度、ゼロから再出発じゃ――。同僚選手に暴力行為を働き無期限の出場停止処分が課せられた日本ハム・中田翔内野手(32)に日本ハムの初代キャプテンで同郷・広島の球界の先輩でもある本紙専属評論家・大下剛史氏がメッセージを送った。今季は極度の不振で二軍落ち、その後に起こった今回の事件もあり「放出説」も強まっているが、同氏は「どんな減給を受けても頭を下げて、日本ハムに残してもらえ」と直言。恩義ある栗山英樹監督(60)のもとでの〝もうひと花〟を期待した。

【大下剛史 熱血球論】細かい経緯までは耳に入ってないが、どんな理由であれ、身内に手をあげた翔の行為は許されるものではない。私もコーチ時代、選手に手を挙げた過去があるとはいえ時代を考えれば、今の世間を納得させることは難しい。内々で事を済ませ、伏せてもおいてもいい事実を球団があえて公表したのは、そんな側面からではないかと想像する。

今回、球団が下した処分は現場を預かる栗山監督にとっても、まして本人にとっても「これほど重いものはない」というぐらいのものだ。

考えてみてほしい。これまで毎日、野球をすることが「当たり前」だった男が残り試合、ユニホームすら着ることができない現実は極めて重い。翔は今、32歳。選手ならば誰しもが「衰え」と向き合うようになる年代。仮に職場復帰を果たしたとしても、復帰前のパフォーマンスに戻すにも、相当の時間がかかるはずだ。

もちろん翔は〝それだけのこと〟をやってしまった。仮にもフロントが、純粋に彼の技術を「頭打ち」と判断するなかで今回の事件が起こったとするならば、今後は日本ハム側から翔をトレードなどで「放出」する動きがあっても何ら不思議はない。

ただ、厳罰を下し、それを公表に踏み切った以上「放出」だけは何とか避けてほしい。これは球団OBでもある私の願いでもある。

ひと言で言い換えるとすれば「中田翔から野球を取り上げてはいけない」ということだ。もちろん「今すぐ」と言うつもりはない。時期は別としてグラウンドに「戻る」場所を用意するのもまた、日本ハムであってほしいということだ。

あれは、翔が初めて4番を任された2012年。交流戦で広島に来た栗山監督と試合後に食事をした。そこで栗山監督は「翔を何としてでも球界の4番にしなければいけない。そのためになら私はどんな苦労をしても構わないし、どんな批判でも受け止めるつもりです」と翔への並々ならぬ思いを語り尽くし、私も「この男が監督なら…」と大いに期待に胸を膨らませたものだ。

幸いにして栗山監督はまだ現在も指揮を振っており、仮に今季限りとなったとしても後任は翔が誰よりも信頼を寄せる侍ジャパン・稲葉篤紀監督が就任予定と聞く。「もう一度、チャンスを」。それは栗山監督も考えてくれているはずと信じているし、この一連の環境こそ翔の再生に必要な要素だと私は思っている。

今回の件で翔はチームメートからの信頼も失っただろうし、こわもてな外見もあり、世間からはより「ワル」のイメージで語られるだろう。ただし、私の知る中田翔はそんな男ではない。キャンプではいつも私の姿の見つけるや否や駆け寄ってきてあいさつをくれるだけなく、同郷で共通の話題も多く、家族など身の上話などもする気さくで気持ちのいい好漢だ。最後にそんな彼に、この場を借りて伝えておきたい。

「いいか翔、反省せぇよ。監督やしかるべき人、北海道のファンの人にしっかり頭を下げて謝り、どんなことがあっても同じことを二度と繰り返すなよ。だからと言って、いつまでも下ばかり向いとってもダメじゃけぇの。お前がまたグラウンドに戻ることを待ってくれている人たちもたくさんいることを忘れるんじゃないぞ。ここまでやってきた恩義をまだ返しきれてない人がおるやろうが! それだけ考えて、とにかく今は我慢せぇ!」。

(本紙専属評論家)

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