「住宅ローン減税」2021年度の改正で何が変わった?受けられる条件とは

人生のうちで一番高額な買い物をいえば、何といってもマイホームでしょう。その住宅取得の後押しをしてくれる国の制度に「住宅ローン減税」があります。住宅ローン減税は、コロナ禍でダメージを受けた経済状況を立て直すための景気刺激策として、延長や拡充される方向で2021年度改正が行われました。新型コロナの影響によって私たちの生活は、在宅時間が増え、時間に縛られない働き方により、求められる住宅のあり方も変化しています。

これから住宅購入を検討している方に向けて、2021年度改正の変更点と注意すべきポイントを中心に解説します。合わせて2022年度改正の動向も見ていきましょう。


2021年度改正の住宅ローン減税はどう変わった?

住宅ローン減税は、一定の要件を満たす住宅を借入金で購入したり、増改築を行ったりした場合に、所得税や住民税から一定額を直接控除できる税額控除の制度です。「住宅ローン控除」と呼ばれることもあります。

住宅ローン減税の主な適用要件

・自ら居住すること
・床面積が50平方メートル以上であること
・既存住宅である場合、耐震性を有していること
・借入金の償還期間(借入期間)が10年以上であること
・合計所得金額が3,000万円以下であること

住宅ローン減税は、ローンを組んで購入すれば、誰であっても、どんな物件でも減税になるのではなく、適用要件が定められています。2021年度改正では、その要件に変更点が2つあります。1つ目は物件の床面積が緩和されたこと、2つ目は住宅ローン減税13年の特例期間が延長されたことです。内容について詳しく見ていきましょう。

床面積の要件の緩和

住宅ローン減税が適用される住宅の床面積は、50平方メートル以上であることが要件になっています。しかし、経済対策として2021年度改正の住宅ローン減税では、従来の50平方メートル以上の要件が緩和されて、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満である住宅も対象となりました。これにはその他条件があり、新築住宅と事業者売主の既存住宅(中古住宅)であって、控除を受ける人のその年分の合計所得金額が1,000万円以下の場合に限ります。もし1,000万円を超えて3,000万円以下の合計所得金額がある人の場合には、50平方メートル以上の床面積の住宅が減税対象になります。

少し細かくなるのですが、合計所得金額について触れておきましょう。合計所得金額とは、申告分離の譲渡所得も対象となり、純損失や雑損失の繰越控除前の金額のことをいいます。その年に土地を売ったなどの事情がある人は、注意が必要です。

(計算例)
前年以前の損失が1,500万円あり、その年2,000万円事業所得があった場合、差し引き500万円ではなく、住宅ローン減税の要件では合計所得金額が2,000万円と計算されます。

また、土地を収用によって譲渡した場合、5,000万円の特別控除があって譲渡所得はゼロでも、譲渡益の分は合計所得金額に含めます。

特例期間を延長

2021年度改正では、住宅ローン減税の控除期間が13年間になる措置が延長されています。もともと住宅ローン減税の控除期間は10年間でした。しかし、消費税が10%に増税された軽減措置として13年間になりました。その後、コロナ禍で入居が遅れたケースでは、一定期間までに契約し、2021年末までに入居すれば特例が適用になる、としていました。

2021年度改正の住宅ローン減税では、契約期限を新築住宅では2021年9月末、分譲住宅や事業者が売主の既存住宅は2021年11月末までに契約し、2022年12月末までに入居した場合には、控除期間を13年間とすることに決まりました。今回の特例の延長については、コロナの影響による入居遅延の証明は不要になります。

改正された住宅ローン減税の注意すべきポイントは?

住宅ローン減税の床面積の緩和によって、今まで住宅ローン減税の対象にならなかった小規模の物件を購入しようと考えている人には、朗報です。世帯の構成は、今やファミリーよりも単身者や夫婦2人のみという家庭が増えてきています。一人暮らしはもちろんのこと、コンパクトな生活を望む人や狭くても利便性がよく都心の駅近な物件を選びたい人は、この2021年度改正は住宅取得のチャンスともいえます。

たとえば、住宅ローン減税が使えれば、今まで家賃を支払ってきた人でも、賃貸の家賃並みで自分の家が手に入るかもしれません。しかし、都心の23区内のマンション価格は、値上がりを続けています。今まで住宅ローン減税の対象にならなかった床面積の物件は、物件数が少ないことも影響して、必要以上に価格が上昇してしまっているものもあります。住宅ローン減税が受けられるメリットは大きいのですが、予算以上に背伸びするのは将来の収入の変化に対応できません。この特例の間に、何が何でも契約しなくては、と借入金を増やしてまで購入するのは考えものです。

また住宅ローン減税の控除期間が13年になる特例は、すべての住宅ではないことに注意しましょう。個人が売主の既存住宅は、13年特例の適用外です。この場合の控除期間は10年で、入居期限は2021年12月末になります。

さらに住宅減税で13年間控除される金額についても押さえておきましょう。住宅ローン減税が利用できる一般住宅の場合は、1~10年目は年末残高の1%が10年間控除され、年間最大40万円が上限になります。10年間の控除額は、最大400万円になります。拡充される11~13年目は、3年間で最大80万円が控除されます。11年目以降は、建物価格の2%(4,000万円が上限)の3分の1か、年末住宅ローン残高の1%かのどちらか少ないほうの額が控除されます。

2022年度住宅ローン減税改正の動向

住宅購入を検討している人でもっとも悩むことは、いま住宅を買うべきかという時期の判断ではないかと思います。もし13年控除を利用して住宅を購入するとすれば、遅くとも2021年11月末までに契約を終えなければなりません。また床面積の要件緩和は恒常的なものではないため、来年以降も継続されるとは限りません。

さらに気になるのは、住宅ローン減税の動向です。会計検査院の指摘により、住宅ローン控除が金利負担を軽減させる目的以上の過剰な控除を行っていることが問題視されています。

現在では変動金利型のローンを利用する人の割合が高く、年0.5%を下回る金利の住宅ローンも多くなっています。そのため利息と住宅ローンの残高の1%控除との間に、利ザヤが生じているケースも出てきています。本来はローンを利用しなくても済む人が、ローンを利用するなどのケースもあり、住宅ローン減税の1%の妥当性が問われているのです。そこで、この住宅ローン減税の控除額を2021年度以降、見直しする可能性が高くなっています。

今後の控除額の見通しは、「年末の住宅ローンの残高の1%」もしくは「1年間に支払う利息金額のどちらか少ない額」が控除額になるのではないかといわれています。今後の住宅ローン減税改正の動向が注目されます。なお、2021年中に住宅を購入する場合には、ローンの返済の途中で税制改正が行われても、現在の年末残高の1%がそのまま適用されます。

状況を考えながら判断を

コロナ禍の影響を受けて、リモートワークやオンライン授業が増え、ライフスタイルにも変化が見られます。この変化で業種によっては、大きな痛手を受けたという企業もあります。住宅業界も着工の遅れや市場縮小傾向があります。景気刺激策としての2021年改正の住宅ローン減税は、住宅購入する側から見ると大きな魅力があるのは確かです。

しかし、今後の収入が増えない、減少するということも考慮に入れておきましょう。収入が減ってしまえば、所得税や住民税からローン残高の1%が控除しきれないかもしれません。住宅ローン減税の恩恵を受けることだけに焦点を合わせてしまうと、長期にわたる住宅ローンの返済が厳しいものになります。計画性をもった住宅購入のうえで、住宅ローン減税は利用すべきでしょう。

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