「生きる目標」絵本完成 「子どもも大人も読んで笑って」 アマ絵本作家・西村さん 長崎市に寄贈

完成させた絵本を手にする(右から)西村仁さんと耕さん=長崎市役所

 生きる目標として仕上げることができた絵本で、子どもたちを笑顔に-。急性骨髄性白血病を患い、闘病生活を続けている長崎市のアマチュア絵本作家、西村仁さん(64)は「長崎由来の古典落語 絵本三部作」を制作。市内全ての市立小と市立中、市立長崎商業高に各1冊ずつを寄贈した。
 元公務員の西村さんは、2012年に白血病が判明し、13年2月に手術を受けた。しかし、その後再発。一度は手術を断られ、「延命治療しかない」と告げられるも、19年2月に再び手術をして現在に至る。
 2度目の手術後、「命が続くか不安になった」という西村さん。「人を笑顔にするもの」を何かつくりたいと思い、絵本の制作を決意した。以前から好きだった落語を題材に、長崎にゆかりのある三つの演目を選び、登場人物やせりふを考えて独自性を追求。副作用で視力が悪化しながらも、2年ほどかけて完成させた。
 10日に市役所で寄贈式があり、絵本制作をサポートした実兄で不動産会社社長の耕さん(68)と2人で出席。田上富久市長に絵本を手渡した。田上市長は「遊び心が満載で、よく考えられている」と太鼓判。今後、各学校では郷土史の教材として活用されるという。
 耕さんは「本人も楽しみながら描いてリハビリにもなっていたみたい。頑張った」と明かす。主治医にも絵本の完成を報告したという仁さんは「絵本を描くという目標があったので、治療を頑張ることができた。何とか完成させられ、本当にうれしかった。子どもも大人も読んで笑ってもらいたい」と語った。
 絵本(定価2530円)は市内の書店でも購入できる。

© 株式会社長崎新聞社