緊急事態宣言下では初 コロナ禍の「靖国神社参拝24時」

靖国神社

東京・九段北の靖国神社は15日、初となる緊急事態宣言下での終戦の日を迎えた。終戦から76年。遺族や戦友の高齢化に加え、コロナ禍で靖国神社への参拝を巡るあり方も大きく変わりつつある。東京都は同日、新型コロナウイルス感染者が新たに4295人報告されたと発表した。日曜日としては過去最多だった。コロナ禍での靖国神社の1日を追った。

昨年もコロナ禍に見舞われたが、今年はさらに感染者が膨れ上がり、7月から都内は緊急事態宣言が発令されている。小池百合子都知事が「豪雨と同じ災害。外出自粛を」と呼びかけた中、迎えた終戦の日。大雨にも見舞われ、参拝者の激減が予想された中、朝から多くの人の姿があった。

午前中に話題になったのは国会議員の参拝だ。恒例の超党派議連による集団参拝はコロナ禍で昨年に続き中止となった。個別での参拝となり、安倍晋三前首相も粛々とSNSで報告した。

閣僚では小泉進次郎環境相、萩生田光一文科相、井上信治万博相が参拝。普段は何かとネット上でいじられる進次郎氏だが、衆院議員に当選以降、参拝を欠かしていないとあって、評価の声が上がる数少ない時でもある。ちなみに参拝後は報道陣に対応しないのは恒例で、「ポエム」も生まれない。

正午からの黙とうを前に拝殿から中門鳥居までは長蛇の列となったが、一変したのは境内の様子だ。軍服を身にまとった人であふれ、撮影会状態となるところ、今年は数えるほどしかいなかった。これには年配の参拝客も「日の丸の国旗を持つ人が少ないし、外国人観光客もいないねえ。コロナだから仕方がないんだろうけど」と寂しげな様子だ。

また大村益次郎像横の参道では、「戦没者追悼国民集会」「感謝の心をつなぐ青年フォーラム」のテント集会が毎年開かれ、数百人が訪れるのが常だった。こちらも昨年に続き、オンラインでの開催に移行している。

青年フォーラムでは、がん闘病中の高須克弥院長(76)が「皆さんにまたお会いできるのは英霊のお力じゃないかと感謝している」とサプライズで登場する一幕もあった。
靖国神社は今年から他の神社でも取り入れられているオンライン祈願を始めている。終戦の日のイベントもオンラインで視聴できる環境が整い、ネット参拝に取って代わる日が来るかもしれない。

靖国神社の周辺が、騒がしくなるのは午後3時を過ぎてからだ。天皇制や政府による追悼式開催に反対する左派勢力が靖国神社に向かって、抗議デモを行うため、警察による厳重警備態勢が敷かれ、靖国通り周辺はバリケードだらけとなる。

「天皇は五輪開会式に出るな!」「女系差別の天皇制は許さない!」などとシュプレヒコールを上げるデモ隊に「不敬行為を許さない!」「日本が嫌なら出ていけ!」とカウンターとなる右派団体が詰め寄り、機動隊は衝突しないように制するのが役目となる。

日ごろ訓練に励む機動隊が実戦形式となる場で、怒号が飛び交う。コロナ感染対策にナーバスになるはずだが、各所で密状態が発生する毎年恒例の光景が繰り広げられた。

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