【小倉記念】モズナガレボシ格上挑戦で〝覚醒〟の理由 直線一気の差し切りV

豪快な直線一気を決めたモズナガレボシ=松山コンビ

15日、小倉競馬場で行われたGⅢ小倉記念(芝2000メートル=サマー2000シリーズ第3戦)は、6番人気の伏兵モズナガレボシ(牡4・荒川)が重賞初制覇。格上挑戦の身ながら、4角最後方からライバルをまとめて差し切った。3勝クラスを勝ち切れなかった馬が、GⅢの舞台で自身の殻を破ることができた要因はなんだったのか?

「外が伸びる馬場になったので、この(外)枠は良かったですね。向正面でペースが上がった時に脚をためることができた分、最後にいい脚を使えました」

手綱を取った松山はこうレースを振り返った。前日の土曜は、記録的な豪雨が降りしきる中での開催。当然、芝はバシャバシャの不良馬場。たった一日では回復は見込めないように思えたのだが…。意外や意外、この日は天気の回復とともに急速に馬場が乾き、1R=重→5R=稍重と芝がみるみる復活。ただし、極悪馬場で開催したダメージはしっかり残っており、内めは荒れて、外を回る馬に有利な状況に変貌していた。

それをフルに生かしたのがモズナガレボシ&松山。道中はじっくりと構え、4角では最後方のポジション。ここからはロスを最小限にとどめるため、ぽっかりと空いた内に入れることも十分可能だったが、そんなことは眼中にないとばかり、迷わず進路を大外へ取った。距離ロスを嫌うよりも伸びる芝をチョイスしたのが大正解。直線での叩き合いから有力各馬が脱落していく中、外から力強く脚を伸ばし、まとめて差し切ってみせた。

馬場やペースを読んでレースを組み立てた松山も見事だが、それに応えた馬もまた立派だ。「やりたいレースができました。賢い馬ですし、乗りやすくて自在性があるのが強みですね」と松山。勝負どころからの確信に満ちた動きは、操縦性の高さもあったからこそできたことなのかもしれない。

「前走の新潟(佐渡S3着)から中1週でしたけど、馬の様子を見てやれると判断しました。状態は良かったですからね」と荒川調教師。管理馬のデキを的確に判断し、果敢な格上挑戦を決めた陣営の決断力もキラリと光った。

これで重賞初制覇を決めたモズナガレボシだが、今回は格上挑戦で軽ハンデ(53キロ)の身。失うもののない立場だったからこそ、大胆なレースができたともいえ、また、それがハマるような馬場や展開だったことも確かだ。馬場や斤量、展開面にアドバンテージがなくても重賞戦線で対等に戦えるのかどうか? それを判断するのは、次走を見てからでも遅くない。この後については「まだ決めていないよ」(荒川師)とのことだが、晴れてオープン馬として臨むその次走こそ、真価を問われることになる。

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