東京五輪が日本の景況感下支え?選手の活躍が消費・投資行動に及ぼした影響を読む

東京オリンピック2020開会式の関東地区の世帯平均視聴率は56.4%で、1964年東京大会の61.2%に次ぐ高い数字となりました。なお、閉会式の視聴率は46.7%とこちらも高い視聴率で、国民の関心の高さが窺える数字になりました。

この大会では視聴率が30%台になった競技が3つありました。まず、8/3(火)の男子サッカー準決勝・スペイン戦です。日本テレビで放送され視聴率は30.8%でした。日本が公式競技となって初の金メダルを獲得した8/7(土)野球決勝のアメリカ戦はNHKが放送し、前半は30.4%、後半は37.0%でした。8/8(日)の大会最終日に行われた男子マラソンはNHKが放送し、前半は23.3%でしたが後半上昇し31.4%になりました。

新型コロナウイルスの影響で1年間延期された東京オリンピック2020大会は、様々な困難がある中での開催となりました。厳しい環境の中で準備を進めてきたアスリートの活躍に勇気づけられた人も多かったことでしょう。新型コロナウイルスが収束する兆しが見えない厳しい状況下でも、人々の消費行動や、投資行動にもプラスの影響を及ぼすと思われます。


新型コロナ感染拡大でも景況感の底堅さを維持

調査期間が7月25日~31日と、東京オリンピック開催期間中に行われた7月の景気ウォッチャー調査で、現状判断DI(季節調整値)は前月比0.8ポイント上昇の48.4と2カ月連続で改善しました。

調査期間中に新規感染者数が急増していたため、現状判断のコメントで新型コロナウイルスに言及したウォッチャーは408人で5月と6月の333人から増加し、東京都に7月12日に4度目の緊急事態宣言が発令されるという厳しい環境でも改善基調は維持されました。ワクチン接種が進んだことも追い風となったようです。ワクチン関連現状判断DIは57.4で6月の51.4から上昇しました。

現状判断でオリンピックに触れたウォッチャーは164人で、6月の32人から大きく増加しました。しかし、オリンピック関連・現状判断DIは47.4で6月の57.0から低下しました。但し、4月の16.7、5月の43.8を上回っていて底堅い数字になった感はあります。東京都の一般レストラン経営者は「東京オリンピックも、業種によっては好況をもたらしているようだが、外食に関しては新型コロナウイルス感染に対する忌避感があり、客足が遠のいている」というコメントをしています。

金メダル数と名目GDPシェアには相関がある

家電量販店ではテレビなどの販売が増加したようです。景気ウォッチャー調査では近畿地方・家電量販店のウォッチャーの「梅雨が長引いたため、エアコンの販売量は余り増加していないが、東京オリンピック需要ともいえる、大型テレビや大容量ブルーレイ・ディスクレコーダーなどの販売増加でカバーしている」というコメントがありました。

また、日本の若者が金メダルを取ったスケートボードなどへの需要増も出ているようです。アスリートがSNSでおいしいと発信した、選手村で出されたものと同じ冷凍食品の餃子や、コンビニのお菓子などへの需要も高まったようです。

今回の東京オリンピックで日本は金メダルを史上最多27個獲得しました。10個目はソフトボール、前回東京大会とリオデジャネイロ大会の16個という過去最高更新した17個目はフェンシング男子エペ団体でした。20個目はスケートボード女子パークで、最後の27個目は野球でした。また、総メダル数は58個でリオデジャネイロ大会の41個を上回りこちらも過去最大になりました。58個目のメダルは、女子バスケットの銀メダルでした。

東京オリンピックでの日本のメダルランキングは第3位です。ランキング10位までの国の金メダル数と2020年の世界経済に占める名目GDPシェアの相関係数は0.861と強い相関があります。

またメダル総数と名目GDPシェアの相関関数は0.866でした。選手育成などにお金をかけられる国が強いといえるでしょう。また、将来判明する2021年の名目GDPのシェアデータとの相関も強くなることが期待されます。金メダルを獲るとその国の人々が元気になって、景気が良くなる効果が生み出されることでしょう。

サッカー男子日本代表の試合結果が翌日の日経平均株価に反映

日本の金メダル数が2ケタに達した大会は、1968年メキシコ大会以降、日経平均株価は大会期間中に上昇しました。2ケタになった今回の東京大会も1.2%と低めの上昇率ですが、大会期間中の日経平均株価上昇は維持されました。

ちなみに10個に到達しなかった大会は、2012年のロンドン大会を除いてすべて大会期間中に下落しています。ロンドン大会の金メダルは7個と少なかったのですが、銀・銅を含めたメダル数が38と当時で史上最多となりマインドに大きくプラスに働いたと考えられます。金メダル10個が、大会期間中の日経平均株価が上昇するか下落するかの閾値と言えるでしょう。

今回のオリンピック競技の中でも視聴率から見て人々の注目度が高かった、サッカー男子日本代表の試合結果と日経平均株価との間の関係も興味深いものがあります。日本代表と翌営業日の日経平均の関係は、これまでのワールドカップなどの結果からも明白です。例えば、ワールドカップ初出場を決めたジョホールバルの歓喜と言われる1997年11月のイラン戦は視聴率が翌日の日経平均株価が北海道拓殖銀行の経営破綻のニュースにもかかわらず1,200円高の上昇となりました。

今回の東京オリンピックでも、男子サッカーの視聴率は高く、3戦全勝だった1次リーグの試合が行われた翌営業日の日経平均株価は上昇しました。2対1で勝った7月25日のメキシコ戦の翌日26日の日経平均株価は前日比285円高でした。4対0で勝った28日のフランス戦の翌日28日の日経平均株価は前日比200円高でした。ちなみに1対0で勝った22日の南アフリカ戦の翌日は休日でした。試合の後の最初の営業日は26日になるので、日経平均株価は前日比285円高でした。7月31日のニュージーランドとの準々決勝は0対0のあと、PKで勝利しました。一番近い営業日の8月2日の日経平均株価は前日比497円の上昇でした。

8月3日のスペインとの準決勝は延長後半に点を入れられて0対1で惜敗しました。翌4日の日経平均株価は前日比57円の下落でした。もし、スペイン戦に勝利し史上初の銀メダル以上を確定していたら、日経平均株価の違った展開が待っていたかもしれません。

また、オリンピック開催年・年末の開催国の株価指数の前年比をみてみましょう。1984年ロスアンゼルス大会以降2016年のリオデジャネイロ大会までの連続する9大会では、ソウル大会、アトランタ大会、シドニー大会、アテネ大会、ロンドン大会、リオデジャネイロ大会の6回が上昇、ロスアンゼルス大会、バルセロナ大会、北京大会の3回が下落となっています。

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