横浜FC・カズ 現役中には明かさない“PKの極意” いつもは率直な返答も「そこは言えない」

カズはどんな質問にも率直に返答してくれたが

【多事蹴論(9)】サッカー界のレジェンド“キング・カズ”こと元日本代表FW三浦知良(54=横浜FC)は日本のエースとして、これまで大事な局面でチームを勝利に導くゴールを決めてきた。中でも“決めて当たり前”と重圧のかかる場面でキッカーを務めるPKについては度胸満点のキックで「職人」と呼ばれるほど高い決定率を誇ってきた。

そんなカズも大ベテランの域に入り、全盛期に比べればパフォーマンスも低下している。スタメンで出場することはほぼなく、ベンチ入りするのもまれ。今季のリーグ戦に限定すると、わずか1試合(1分)出場にとどまっている。最後にゴールを決めたのは横浜FCがJ2だった2017年3月12日の対群馬戦で当時50歳14日。自身が持つJリーグ最年長得点記録も更新した。

あれから4年、チームはJ1に昇格。再び最年長ゴール記録の更新が期待される中、4月まで横浜FCの監督を務めていた下平隆宏氏は昨季から「PKになったらカズさんに蹴ってもらう」と公言していた。出場機会が激減し、プレー時間も少ないことから流れの中での得点を期待するよりもPKキッカーを任せ、記録更新を期待していた。

もちろん、チームには常に勝利が求められており、PKの失敗は許されないが、カズの精神力や技術力は高く評価されており、キッカー指名もチームにとって最善策と言える。何よりキングがゴールを決めれば、チームにも勢いがつく。さらにはゴールパフォーマンスのカズダンスで周囲が盛り上がれば、これまで以上にファンの後押しも期待できる。

そんな“十八番”について本紙記者がカズに質問したことがある。キッカーを務めるときの心境やどんな狙いを持ってコースを決めるか、キックの強弱など、どんなイメージを持っているのかを聞くと「それはダメだな。自分なりの考えはあるけど、まだ現役選手としてやっているから。そこは言えない」と答えてもらえなかった。

普段はどんな質問にも率直に返答してくれ、欧州チャンピオンズリーグ(CL)の記者会見でメディアから厳しい質問を浴びせられるシーンを例に出して「あれくらいのことを聞いてくれても構わないから」と、プレーと同じように取材対応でもプロフェッショナルな姿勢を示している。

実際、カズは聞きにくい質問に対しても、真摯に対応。また自身の去就や年俸など明確にできない問いにも自分なりの考えを伝えてくれる。ただ現役選手である以上、自身の“秘密”を明かしてピッチで不利になるのは避けなければならないのは当然、理解できる。まだまだ現役にこだわるカズに、PKの極意について取材できる日は来るのだろうか。

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