【追う!マイ・カナガワ】元気でいて、病状心配、共に我慢… 帰省自粛の夏に募る思い

JR桜木町駅前を歩く親子連れ。多くの人が帰省を諦めた夏となった=横浜市中区

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、今年の夏も神奈川県外への帰省や旅行などの自粛が呼び掛けられている。離れて暮らす家族や親戚、友人らに、いつになったら会えるのか─。「追う! マイ・カナガワ」取材班が「帰省できない夏」に行ったアンケートには、大切な人へのメッセージが続々と寄せられた。

◆お葬式も新盆も断念

 横浜市港南区の60歳の無職女性「みこちゃん」さんは昨年、父親を亡くした。今年の新盆で帰省するつもりだったが、県をまたぐ移動の自粛で断念した。亡くなった際も、コロナ禍で葬儀の参加を止められていたという。

 「最愛の父の遺体との対面もかなわず、火葬にも立ち会えなかった。私のように親の最期にも会えず、悲しい場面が増えないように。一周忌には帰る予定で飛行機の切符も買いました。それまでお母さん、体に気を付けて元気でいてくださいね」

 お盆の帰省を楽しみにして、子育てを頑張ってきたという同市神奈川区の49歳の派遣社員女性「1日も早くみんなに笑顔が戻りますように」さんも両親への思いを募らせた。

 「残りの人生で両親と過ごせる日々がもういくらもないことを痛感している。子どもが大きくなり、いざ自由に行き来できると思っていた矢先のコロナに悲しみしかない。早く顔を見に帰りたい、ただそれだけのために日々耐え忍んでいます」

◆心身ともに「ボロボロ」

 同区の60代の無職男性「じょん」さんは、愛知県の施設に入所する父親の病状を心配している。「体調を崩して入院中で、テレビ電話もままならなくなった。こんなときに飛んで行けないのが歯がゆいです」。川崎市幸区の48歳の飲食店勤務の男性「にーやん」さんも両親に宛て、「同じ県内なのに随分と帰っていなくてごめんなさい。会えば安心することも分かっているけど、自分たちのことだけ考えるわけにはいかないと思うので、我慢しています。落ち着けばまたご飯を食べに行こう」と思いをつづった。

 エッセンシャルワーカーとして日々奮闘している若い世代にも、故郷に帰れない寂しさが押し寄せる。地元が福島という横浜市磯子区の26歳の介護職女性「でにむ」さんは「高齢者をコロナから守る仕事をしているが、身体的にも精神的にもコロナのせいでボロボロ。SNSで福島に関わる投稿があると帰りたいなとつくづく思う。気兼ねなく帰省でき、家族や友人とわいわい過ごせる日はいつになるかと思うばかり」と切実な願いを訴えた。

◆「自宅で過ごす」最多

 アンケートは9~11日に「マイカナ友だち」を対象に実施した。「今年の夏をどう過ごしているか(予定を含む、複数回答可)」という質問には367人が回答し、「自宅で過ごす」が最多の334人だった。

 一方、県外へ旅行や帰省をするといった回答も若干あり、「民意や専門家の意見を聞かず、開催意義も示さないまま五輪開催を強行する政府の指示にはもう従わない」(同市戸塚区の49歳会社員男性)という意見や、「認知症の親がいるし、ワクチンも接種したのでお線香を上げに行きました」(相模原市中央区の46歳主婦)などの声もあった。

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