「ゆうこりんを助けてあげられませんでした。ごめんなさい。あすこそは」「とにかく必ず助けます」。長崎県雲仙市小浜町雲仙の土砂崩れで安否不明となっていた森優子さん(32)が17日、遺体で発見された。「絶対生きていて」。連日捜索を続けた地元消防団員たちの願いは届かなかった。
「地獄生まれ、地獄育ちのゆうこりんです♫」のキャッチコピーで雲仙温泉を全国にPRしてきた優子さん。地元の誰もが知る存在「ゆうこりん」。観光振興に取り組む地元の人たちにとって頼もしい同志であり、愛される妹的存在だった。
小地獄地区の実家で育ち高校卒業後、専門学校を経て福岡に就職。ケーキ販売業などを経て、東京ディズニーランドでアトラクションキャストを務めた。
地元にUターンし、2017年12月、雲仙温泉観光協会の広報担当に。温泉街PRのイベントのほとんどの企画、運営に携わり、ツアーガイドも買って出た。「休みの日もイベントを手伝っていた。頑張り過ぎていて心配するほどだった」。同僚の手島晋一郎さん(43)は、優子さんのあふれる「雲仙愛」に圧倒され、感心していた。
土砂崩れが優子さんと両親をのみ込んだ後、手島さんは消防団員として現場に入った。懸命の捜索もむなしく、遺体で発見された。「言葉がない。気持ちの整理が付かない」。手島さんは涙で声を詰まらせた。
雲仙温泉を擬人化したキャラクター温泉むすめ「雲仙伊乃里(いのり)」のPRに一緒に取り組んだ武田和敏さん(36)=カフェ経営=も「雲仙にとってのリアルな温泉むすめは、ゆうこりん」と肩を落とす。
雲仙温泉街のカメラ店で日本茶喫茶室を営む松尾亜樹さん(52)もショックを隠しきれない。「お店の一角で観光客にお茶を提供してくれませんか」と優子さんに声を掛けられ、「喫茶室」を構えた。さまざまなものを観光に結び付ける「ひらめき」に感激した。「これからも手を携えて雲仙観光の振興に取り組む予定だったのに…」。
13日、「優子さんが行方不明」との一報が松尾さんにも届き、何度も携帯電話を鳴らし続けた。捜索開始から5日目の17日夕、仲間たちの間に悲報が駆け巡った。雨が降りしきる現場で捜索に当たった関係者によると、優子さんは自宅近くの鳥居のそばで布団にくるまれた状態で見つかった。目立った傷はなかった。周囲に愛され、雲仙をこよなく愛する「ゆうこりん」のままだった。