ホテルが炊き出し、大浴場開放… 大雨被災の長崎・雲仙 広がる支援の輪

届けられた卵を調理する関係者=雲仙市小浜町、やまびこ会館

 雲仙温泉街(長崎県雲仙市小浜町)周辺では、大雨により複数の土砂崩れが発生し、山手の地表面に亀裂も見つかった。周辺住民は避難生活を強いられ、不安な日々を送る。そんな中、温泉街のホテルが避難者向けに炊き出しをしたり、温浴施設を開放したりするなどして支え合う動きが出ている。
 災害現場に近い雲仙メモリアルホールには、29世帯53人(18日午前8時時点)が避難。15日、同温泉街中心部の「八万地獄」で土砂崩れが起き、さらに、現場近くの山で亀裂も見つかったため、市の要請に従って身を寄せている。
 商店街でベーカリーを営む高橋治次さん(59)は15日から避難しており、「いつ自宅に戻れるか、先行きが見えず不安。避難が長引くのは商売もあるので、きつか」と疲労の色をにじませながら話す。
 避難生活が長期化の様相も見せる中、地元では支援の輪も広がっている。
 災を免れている近隣の旅館雲仙福田屋は16日から、避難所にカレーライスや親子丼、みそ汁などを差し入れた。大雨による宿泊予約キャンセルで生じた食材の余りを使って調理している。「住民のため、地域のためと思い取り組んでいる。(福田屋は)被災していないので支援するのは当然の役目」と福田努社長。避難が長引けば、雲仙旅館ホテル組合としての炊き出し支援も検討するという。
 雲仙温泉観光協会も17日、普段「地獄」内の遊歩道で販売している温泉卵用の生卵4ケース(1ケース180個入り)を避難所の住民に無償提供。近くのホテルの総料理長が調理して避難者に振る舞い、元気づけた。
 避難している古湯自治会の加藤宗俊さん(66)は「ホテルや地元商店から食材提供もあり充足している。前向きな気持ちで避難生活を乗り切りたい」。
 土砂災害の影響で配管が破損し利用できなくなった共同浴場もあるため、有明ホテルは14日から大浴場を無料で開放。避難住民らが連日20人ほど利用し、喜ばれている。避難中の今村日出夫さん(85)=古湯地区で喫茶店経営=は「避難所に一日中いるから、良い湯に漬かると気分転換にもなる。本当にありがたい」と表情を緩める。
 日帰り温泉「雲仙よか湯」は、一時給湯ポンプの故障で営業休止したが、16日から再開。避難所で無料入浴券を配って利用してもらっている。店主の関昌子さん(76)は「大変な事態に直面し、雲仙温泉のみんなが支え合うことが大事」と話している。

避難住民に無料開放している浴場=雲仙市小浜町、雲仙よか湯

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