韓国経済紙「営業秘密流出で韓国は年間5.6兆円の損害」「無罪率高く...命を絶つ例も」

韓国で営業秘密の流出による年損害額が60兆ウォン(約5.6兆円)に達し、韓国政府が研究開発に投じる金額100兆ウォン(約9.4兆円)の実に60%水準にも達することから、これに警鐘を鳴らす記事が出ている。

韓国の毎日経済新聞は18日、「技術開発に100兆使うのに60兆が営業秘密の流出でだらだら漏れている」という特集記事を掲載した。

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同記事を執筆したイ・セボム記者は、ある企業(A社)の社員が退社後に同業他社と手を結び、営業秘密を流出させた結果、A社に100億ウォン(約9.4億円)以上の利益急減をもたらした例を紹介。A社は競合他社に10年の長い訴訟戦の末に勝訴するも、補償金は70億ウォン(約6.5億円)に留まったと伝えた。

その上で、韓国特許庁の試算などをもとに、「国内(韓国)では毎年、営業秘密流出で抜けていくお金が最大60兆ウォンに達するものと推算された」とし、「毎年国家研究開発(R&D)に注ぎ込むお金が100兆ウォンであることを勘案してみると、国家が、R&Dに投資した費用の60%がそのままだらだら漏れているわけだ」と指摘した。

営業秘密は独占権を付与される「特許」とは異なり、侵害されてもそれを証明するのに困難を伴うことが多い。その秘密がたしかに営業秘密であると認知しそのように管理した実態がなければ、認められない場合がある。

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韓国特許庁が2017〜2019年の営業秘密に関する刑事事件324件を調査した結果、無罪率が34.5%(112件)に達したという。昨年の韓国の刑事事件1審無罪率が0.81%であることから、一般刑事事件に比べて、営業秘密刑事事件の無罪率が42倍近く高いとイ記者は指摘する。実際、無罪の3件のうち1件が「秘密管理性不認定」だったとのこと。

営業秘密の流出は大企業だけの問題ではない。中小企業でも多く、中小企業ほど営業秘密管理に無知な事例が多いことから被害も少なくない。イ記者は韓国の創業企業5年生存率(29.2%)が他の主要国に比べ著しく低い(仏48.2%、英43.6%、伊41.8%)ことを指摘し、「専門家は、アイデアや技術流出被害が頻発して、中小・ベンチャー企業の成長の梯子が弱体化したと指摘する」と伝えた。

韓国の理系最高学府であるKAIST(韓国科学技術院)イ・グァンヒョン総長も、韓国のベンチャー企業が成長していない最大の理由の一つは「技術奪取」であると批判したとイ記者は伝えた。

一方で、ある種苗会社の研究者が取引先の中国企業の求めに応じ、自身が開発した原種45gを伝え金銭(約80万円)を受け取った。検察の捜査が始まると同研究者は自ら命を絶ったという。「営業秘密流出は、企業だけでなく、流出させた本人の生活にも影響を与える場合が多い」とイ記者は警鐘を鳴らす。

この記事をみた韓国のネットユーザーからは、

「深刻だね、1日も早く改善されないと」
「…技術力に対する財産権とその重要性、価値を一つも認められない文化だから大企業にやられたら泣き寝入りするしかない」
「法が緩いからそうなるしかない。国家より人権が重要だからなおさらそうだ…」
「普通、アイデア持っていく人は、会社がその人の価値を正しく算定できなかったから発生する」
「国に泥棒が多いから、これら泥棒を捕まえるだけでも国の税収にお釣りが出るよ…」

などのコメントがネット掲示板に投稿されている。

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