千葉真一さんを怒らせた杉作J太郎が緊急寄稿「少年であり、太陽のような人」

急死した千葉真一さん

俳優の千葉真一さんが19日、午後5時26分、新型コロナウイルスによる肺炎で死去していたことが分かった。82歳。交流のあった映画研究家・杉作J太郎が追悼メッセージを寄せた。

私は初対面の時に千葉さんを怒らせてしまった。子供のころからずっと大好きな、いつも太陽のように明るい、そんなイメージの千葉さんの表情を曇らせてしまって当時の私は気絶しそうなほどつらかった。

二度目に千葉さんにお会いしたのは映画館で千葉さんの作品の上映があり、私がトークコーナーの相手だった。その時は話の展開が楽しい感じになって、千葉さんは満面の笑顔で上機嫌になった。怒る時は怒る、だが次の瞬間、もうそれを許して満面の笑顔になる。まるで太陽のようだと思った。はるかに年長の大スターに対して申し訳ない表現かもしれないが少年のようだとも思った。最高にいい意味で。

とはいえ二度目に会うのは若干怖かったのが本心だ。怒りがぶり返したりしていたらどうしよう。私はこわごわ映画館に向かった。ちょうどテレビの取材を受けていた。私は邪魔にならないようにそっと映画館の隅に隠れた。取材を受けている千葉さんの声が聞こえてきた。

「いやー、今日は杉作J太郎さんもいっしょだからねー、楽しみですよー」

千葉さんは私が来たのを知ってそう言ってくれたのだ。もしかしたら私が前回のことで気にしていると思ったのかもしれない。そうだったと思う。

その日は娘さんもいらしていた。千葉さんは前日に米国から帰国したばかりで、アメリカで買ったというワインをたくさん持ってきていた。終わった後の打ち上げでみんなで10本ぐらい飲んだ。映画の勉強するならハリウッドだと言った。私がハリウッドに行ったことがない、と言うと「マネージャー!」と当時、私が属していた事務所の担当者を注意した。

そして「このワイン、いくらだと思う? 安いんだよー!」と笑った。確かにすごく安い値段だった。気取ったり、恩を着せたりするなら高く言う。というか、アメリカから手荷物としてわざわざ持ってきてくれたことは事実なのに「安いでしょー」と笑う千葉さん。

千葉さんはいつ会っても純で明るくて気取らない方だった。それだけは間違いない。

どこかで千葉さんは絶対に死なないと思っていた。今、コロナウイルスがものすごく憎い。そして怖い。千葉真一さんの御冥福をお祈りします。(杉作J太郎)

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