“最速男”小林可夢偉が圧巻のタイム。初優勝狙う7号車トヨタがポール獲得/ル・マン24時間

 8月19日、“世界三大レース”のひとつに数えられるル・マン24時間レースのポールシッターを決める予選セッション、ハイパーポールがフランス、ル・マンのサルト・サーキットで行われ、小林可夢偉駆るTOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)が第89回大会のポールポジションを獲得した。

 昨年のル・マンで初採用され、今大会でも引き続き実施されることになったシュートアウト方式の予選。このハイパーポールでは、ル・マン・ハイパーカー(LMH)規定に基づく新たな最高峰カテゴリーのハイパーカークラスをはじめ、LMP2、LMGTEプロ、LMGTEアマの4クラスで前日の予選を生き残った各クラス上位6台のマシンを対象に、タイムアタックによってカテゴリー内のグリッド順位、および総合ポールポジションを決定する。

 日没後わずかな明かりが残るル・マンの現地21時、気温19度、路面温度25度のなか30分間のセッションがドライコンディションでスタートすると、事前にピットレーンに並んだ全23台が一斉にトラックになだれ込んでいく。

第89回ル・マン24時間レースのポールポジションを獲得した7号車トヨタGR010ハイブリッド

 最高峰のハイパーカークラスでは全車が2周目にアタックを行い、このなかで可夢偉がステアリングを握る7号車トヨタが3分23秒900をマークして暫定トップに立つ。

 さらに、FP3のクラッシュから復活した8号車トヨタGR010ハイブリッドが、ブレンドン・ハートレーのドライブで3分25秒133を記録。暫定2番手につけ早くもトヨタ勢がワン・ツーを築き、3分26秒475というタイムを記録した708号車グリッケンハウス007 LMH以下のライバルたちをリードする。

 この直後のセッション開始から8分後にインディアナポリスで、ポルシェGTチームの92号車ポルシェ911 RSR-19がクラッシュを喫する。このアクシデントによって赤旗が提示され、セッションタイムは残り22分17秒でストップした。

 タイヤバリアの修復完了後にセッション再開されると、ふたたび各車がアタックに向かう。暫定首位の可夢偉は赤旗前のタイムとほぼ同等のタイムでホームストレートに戻ってくるも、0.023秒のプラスでタイム更新ならず。一方、僚友ハートレーは3分24秒195まで自己ベストを縮めることに成功した。

 また、暫定3番手につけるオリビエ・プラの708号車も自己ベストを更新すると、その直後、ニコラ・ラピエール駆る36号車アルピーヌA480・ギブソンが3分26秒015で3番手を奪う。

 しかし、グリッケンハウスもこれに応戦。3分25秒996というタイムで再逆転するが、ラピエールも3分25秒574を記録してみたびの逆転。708号車は最終盤に自己ベストを更新し3分25秒805まで迫るが、反撃ここまで。初参戦のル・マン予選は総合4番手となった。僚友709号車グリッケンハウス007 LMHは、ロマン・デュマのドライブで3分26秒931というタイムを記録し総合5番手につけた。

 この結果、ル・マンのレコードホルダーである可夢偉が2019、20年大会に続き、3年連続で“最速の称号”を獲得することとなり、僚友8号車と並んでフロントロウを独占。トヨタに5年連続となるポールポジションをもたらした。また、チームメイトのコンウェイにとっては初優勝に一歩近づくバースデープレゼントとなっている。

ハブオート・レーシングの72号車ポルシェ911 RSR-19

■GTEは2クラスともにポルシェがポールポジションを獲得

 LMP2クラスも前日に行われた予選で速さをみせたJOTAが好調を維持し、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ駆る38号車オレカ07・ギブソン(ロベルト・ゴンザレス/ダ・コスタ/アンソニー・デビッドソン組)が3分27秒950をマーク。ライバルを0.5秒近く引き離すタイムでポールポジションを獲得した。

 クラス2番手はチームWRTの41号車オレカ07、3番手にはオリビエ・パニス率いるパニス・レーシングの65号車オレカ07が入っている。

 LMGTEプロクラスは92号車ポルシェの離脱によって実質5台での争いとなり、まずはダニエル・セラがステアリングを握ったAFコルセ52号車フェラーリ488 GTE Evoが3分47秒063というタイムで暫定クラス首位に立った。しかし、セッション終盤に“伏兵”ハブオート・レーシングのドリス・ファントールが3分46秒682をマーク。これがクラス最速タイムとなり72号車ポルシェ911 RSR-19がGTEプロクラスのポールポジションを手にした。クラス3番手はコルベット・レーシングの64号車シボレー・コルベットC8.Rだ。

 LMGTEアマクラスはポルシェ勢がライバルに対して速さをみせ、クラス唯一の3分48秒切りとなる3分47秒987を記録したデンプシー・プロトン・レーシングの88号車ポルシェ911 RSR-19(ジュリアン・アンドラウアー/ドミニク・バスティン/ランス・アーノルド組)を先頭に、GRレーシングの86号車ポルシェ911 RSR-19、チーム・プロジェクト1の56号車ポルシェがトップ3を占めている。

 ハイパーポールを終えた2021年のル・マン24時間は19日(木)のFP4を経て、21日(土)午前中のウォームアップに続き、同日16時(日本時間23時)に24時間に及ぶ長いレースのスタートが切られる予定だ。

デンプシー・プロトン・レーシングの88号車ポルシェ911 RSR-19
FP3でクラッシュを喫した8号車トヨタGR010ハイブリッドはボディワークを交換してハイパーポールに復帰。2番手タイムを記録してトヨタのフロントロウ独占に寄与した。
グリッケンハウス・レーシングの708号車グリッケンハウス007 LMH
予選ハイパーポールで、各クラスのポールポジションを獲得したドライバーたち

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