寝たきり障害児の母に余裕を 脱ぎ着が「楽」な子ども服開発

「メデルミー」のロンパースを奨君に着せる原村さん=大村市内

 長崎県大村市在住の原村綾さん(41)が、寝たきり状態でも脱ぎ着させやすい子ども服ブランド「medel me(メデルミー)」を立ち上げ、インターネットで販売している。原村さん自身も、障害で寝たきりの子を持つ母親のひとり。「日々のストレスを軽減することで、母親にも自分の人生を楽しむ余裕を持ってもらいたい」と話す。
 原村さんは佐賀県出身で、2015年に長男の奨君(6)を出産。生後すぐに重症のてんかんで指定難病の大田原症候群と診断され、2カ月で脳の一部を切除する手術を受けた。その後遺症で右半身にはまひが残り、現在も国立病院機構長崎医療センター(大村市)に通っている。
 通院のため17年に大村に移住。ひとり親で、慣れない育児や長期入院、リハビリなど余裕のない毎日に追われていた。特に着替えは子どもの身長や体重が増えるにつれ、負担も大きくなっていった。「奨君は右手が動かないため余計に手間が掛かる。大変なことが当たり前と思っていたけど、突然、涙があふれることもあった」と振り返る。
 そんな生活の中で、「障害児の母親はもっと『楽』してもいいはず」と一念発起。「着せたいと思うようなかわいいデザインで、機能的な物が無かった」という障害児向けロンパースの開発に乗り出した。アパレル会社に勤めていた経験を生かし、約2年掛けてデザインや機能性にこだわった商品を開発。「自分(親自身)をめでてほしい」との思いを込めたメデルミーのブランド名で、19年に販売を始めた。販路開拓に当たっては、大村市産業支援センターの協力を受けた。

寝たきりでも脱ぎ着させやすいよう配慮した「メデルミー」のロンパース

 商品はパステルカラーの生地を使ったロンパース4種類。袖が面ファスナーで大きく開くことで脱ぎ着させやすい形状にしたほか、成長した子でも使えるよう150センチまでのサイズを用意。肌に優しい生地を使い国内工場で製造するなど、さまざまなこだわりを詰め込んだ。価格は5千~8300円(税別)。今後は新色やパジャマのほか、障害者が描いた絵とコラボレーションした商品なども企画している。
 「人懐っこい性格で、4歳の時には『ママ』と呼んでくれた」と原村さん。奨君は来年、小学校入学を控えている。ただ、日本で100人未満とされる症例が少ない病気のため、どこまで成長できるかは分からない。それでも「私たちに大切なのは一緒にいる今この時間。これからもいろんな服を着てもらいたい」。服の製作を通じ、同じ境遇の親子にも幸せな時間を過ごしてほしいと願っている。
 メデルミーのオフィシャルブランドサイトで購入できる。


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