土砂崩れから1週間 雲仙観光に暗い影 休館やキャンセル相次ぐ

土砂を被った土産物店の様子などを確認する環境省、県、市の担当者=雲仙市、雲仙温泉街

 長崎県を代表する観光地、雲仙市小浜町雲仙での土砂崩れから20日で1週間。秘湯で人気の小地獄地区と温泉街のメインストリートそばの「八万地獄」周辺が立て続けに姿を変え、観光関係者らに衝撃が広がった。宿泊施設の休館や宿泊客のキャンセルが相次ぎ、雲仙観光の今後に暗い影を落としている。
 同市の2020年の観光客数は延べ約183万人。コロナ禍の影響で前年より約3割減少し、05年の新市発足以降、初めて200万人を割った。
 雲仙温泉街とは、岩の間から白煙が上がる名所「雲仙地獄」の南北に位置する古湯、新湯両地区と、雲仙地獄から南に約1キロ離れた小地獄地区などを指す。雲仙温泉観光協会によると、災害前までに営業していた旅館・ホテルは12施設。19日現在、5施設が休館。このほか源泉や配管が損傷し、湯が出なかったり、湯の温度が下がったりした施設が一部あった。日帰り温泉施設2カ所と観光施設5カ所も休館している。
 宿泊客のキャンセルも相次ぐ。同協会は「県民限定の宿泊割引キャンペーンの一時停止などが重なり、正確な数は調査中」とした上で、「休館長期化への不安はあるが、営業継続している施設や避難者を受け入れている施設もあり、何とか乗り切りたい」としている。
 2世帯4人が土砂崩れに巻き込まれた小地獄地区。木造の建物が趣深い小地獄温泉館と宿泊施設「雲仙温泉 青雲荘」が静かな集落に立つ。両施設をグループ内に持つ長崎自動車(長崎市)は「施設への立ち入りが難しく、再開のめどは立っていない」と困惑した様子。
 13日夕に土砂崩れが発生した八万地獄周辺。近くの甘味処「やらやら」は建物内に土砂が入り込み、土産品や酒類などの商品、厨房(ちゅうぼう)用品が使用不能に。経営する「もみの木」(諫早市)は「通常、午後6時の閉店時間を1時間、前倒ししたので、従業員は難を免れた。店も周辺もダメージを受けているが、観光の中心は『地獄』。復興に動きだしたら、雲仙の力になりたい」と言葉に力を込めた。
 19日、県文化観光国際部の中崎謙司部長らが八万地獄などの被災状況を視察。中崎部長は「雲仙地獄が全滅したという誤ったイメージが広がっている。雲仙のブランドを落とさないよう、国、県で何ができるか、知恵を絞りたい」と述べた。

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