エンジョイ精神を貫く132球だった。第103回全国高校野球選手権大会(甲子園)第7日の20日、第2試合に登場した西日本短大付(福岡)は、二松学舎大付(東東京)に0―2で敗れた。11年ぶりに夏の聖地に戻ってきた「西短」。当初13日に予定されていた初戦が、悪天候による順延続きで1週間遅れた。
待ちに待った晴れ舞台で、エース・大嶋柊投手(3年)は思う存分に腕を振った。プロ注目の最速144キロ右腕。スピンの利いた真っすぐと90キロ台のカーブ、スライダー、チェンジアップなど多彩な変化球を駆使して2失点完投も、チームを勝利に導くことはできなかった。
「負けは負け。しっかり勝たなくてはいけなかった」
ハイレベルな投手戦に屈し、試合後は言葉を詰まらせ涙が止まらなかった。それでも「甲子園は自分をより成長させてくれる場所だった」と振り返り、次なるステージでの〝リベンジ〟を誓った。
エースは人目をはばからず号泣したが、エンジョイベースボールは貫いた。
「(福岡の)代表校として勝ちたかったですが、楽しむことができました。楽しかったです」(大嶋)
今月10日、野球部OBの新庄剛志氏(49)が出場を祝して贈呈を予告していた応援Tシャツが宿舎に届いた。「勝ち負けよりも甲子園での野球をちかっぱ楽しんで暴れてきんしゃい」。前面に熱いメッセージが刻まれたTシャツに袖を通し「西短の誇り」を胸に聖地に立った。
「すばらしいゲームでした」。開口一番そう総括した西村監督の言葉には、充実感がにじんでいた。