横浜市長選挙|U30が気になるテーマを深堀り!(NO YOUTH NO JAPAN)

こんにちは!NO YOUTH NO JAPANです。私たちは若い世代から参加型デモクラシーを根付かせるため、政治や社会について分かりやすく発信している団体です。(Instagram:NO YOUTH NO JAPAN (@noyouth_nojapan) • Instagram photos and videos

若い世代が注目する争点は?

神奈川県の横浜市では、現職の林文子市長が今月8月29日に3期目の任期を終えます。そのため、8日付けで次の市長を決める横浜市長選挙が告示され、現職の林氏を含めた計8人が立候補しました。横浜市は人口 3,779,391人(2021年7月1日時点)を擁する日本最大の政令市であり、そのトップを決める今回の市長選は、今年の秋にも行われる予定の国会の衆議院選挙にも大きな影響を与えると言われていることから、非常に注目度の高い選挙です。

今回の市長選の争点は、カジノを含む統合型リゾート(以下、「IR」)誘致に対する賛否や、コロナ禍で大きな打撃を受けた地域経済および市の財政立て直し、少子高齢化を見据えたまちづくりなど、多岐にわたります。

私たちNO YOUTH NO JAPAN(以下、NYNJ)は6.6万人の方にフォローしていただいている(2021年8月14日時点)Instagramのアカウントで、政治や社会について知る入口として、わかりやすく・ポップにU30が知っておくべきトピックについて日頃から発信しています。 また、団体発足のきっかけとなった2019年の参議院選挙を皮切りに、2020年には兵庫県三田市議会議員選挙(「若者の投票率を80%にしたい!」三田市議選プロジェクト(NO YOUTH NO JAPAN)プロジェクト名 VOTE FOR SANDA)、千葉県知事選(VOTE FOR CHIBA)など、地方選挙への投票を促す活動にも積極的に取り組んでいます。

そして今回の横浜市長選では、Instagramのストーリーズ機能を用いて、フォロワーのみなさんが横浜市長選や主要な争点に対してどのような興味・関心を抱いているのかを知るために以下のようなアンケートを実施し、U30世代が今回の選挙についてどのような意識をもっているのか、探ってみました。また、今回のアンケート項目は市長選の投票率をあげようと同じくInstagramでの発信を行っている20代のグループ「VOTE FOR YOKOHAMA(https://www.instagram.com/votefor_yokohama/)」(詳しくはこちら )の候補者アンケートを参考にしています。

「IR誘致」には今回のアンケートでも一番の票が集まり、(全体の38.1%・208人)。その後に気候変動(21.6%・120人)が続き、子育て(20.6%・114人)、コロナ対策(19.6%・110人)と僅差で並びました。

横浜市長選の主要争点と報道されることも多いIR誘致の是非が気になると答えた回答が多かったことからは、若者の間でもこの争点に対する関心が高いことが伺えます。また、近年国際的にも最重要課題として捉えられるようになってきている気候変動への関心が次点に集中したことは、気候変動という問題を国だけでなく、地方政治のレベルでも考えていきたいテーマと捉えている人が多くいることを表しているとも言えそうです。さらに、今回各候補者が「中学校の給食」についての言及をしていることから、教育や子育てに関する政策にも注目が集まっているようです。

さらに、主にU30世代フォロワーが回答した今回の①のアンケート結果は、一般的な世論調査と違いは見られるのかどうかについても調べてみました。

朝日新聞が8月9日、10日に実施した4択の世論調査(※)では、横浜市長選において何を1番重視して投票する人を選ぶかを尋ねた質問に「カジノ誘致への対応」と回答した人は40%という結果になっていました。NYNJの①のアンケートで、最も興味を持つトピックは、カジノ・IRと答えた人は38.1%となっているため、朝日新聞の世論調査と比較すると、数値の若干の違いはあれどU30の主な関心と全世代の主な関心は概ね一致していると言えそうです。しかし、朝日新聞の世論調査で次点についた「新型コロナウイルス対策」は25%である一方、NYNJのアンケートでは18%と若干の開きが見られます。調査方法に違いはありますが、若い世代の関心は全世代と必ずしも一致するとは言えない可能性を示唆しています。

(※)選択肢は、「カジノ誘致への対応」、「新型コロナウイルス対策」、「人柄や経歴」、「支援する政党や団体」の4つ。質問は「何を一番重視して投票する人を選ぶか」。

②の自由回答形式では、IRについては「カジノについてなんでそんなに反対するのか分からない」「IRとコロナばかりが争点になっている」といった意見があり、教育や福祉に関しては「育児しやすい横浜であってほしい」「子育て世代、若者支援を充実させてほしい」といったに意見が集まりました。また、「コロナ対策など、直近で対処が必要な政策もあるが、数十年を見据えた視点も必要」といった市政の在り方に関する意見もありました。

次に、アンケートで関心の高かったトピックについてもう少し詳しく見ていきます。

IR、賛成?反対?ーーその先の横浜はどうなる?!

IRに関しては、多くのメディアで各候補者の誘致「賛成」「反対」に注目が集まっているようです。もちろん誘致をするか否かは喫緊の課題として重要ですが、これからの横浜を担うU30世代にとっては、「IR誘致後/IR誘致の断念後、横浜はどのように変わるのか?」というところも同じくらい気になるところではないでしょうか。そこで、各候補者はIR誘致賛成/IR誘致反対の先に、どんな横浜づくりを目指しているのか、NYNJの視点からまとめていきます。

<誘致賛成派>(届出順)

1.福田峰之氏

IRの納入金は、将来の収支不足を見越した財源であり、特に子育て対策の財源として活用する。また、IR誘致によって、首都圏の玄関口として、横浜に物・お金・情報が集まり、起業・創業の環境を整えることに繋がる。

2.林文子氏

IR誘致により、将来の税減収を補い、福祉、子育て、医療、教育、公共施設の更新等に活用する。また、安定して税収確保と新たな雇用環境を創出していく政策を実行する。

以上の福田氏、林氏がIR誘致賛成派で、共にIR誘致が経済復興や財源確保につながり、IRによる収益を子育て等の財源としたいと述べています。

 <誘致反対派>(届出順)

1.太田正孝氏

IRの代替案として、ロボットなどの先端技術の研究拠点やリゾート作りをする。

2.田中康夫氏

日本最大の国際展示場を作る。

3.小此木八郎氏

横浜版成長戦略・規制改革推進会議を新設し、新たな成長戦略を策定する。

4.坪倉良和氏

IR誘致の代わりに、山下ふ頭に中央卸売市場を移設する。市場に隣接するように、▽フィッシャーマンズワーフ、▽ファーマーズマーケット、▽食の学校を設けた食のテーマパークを作る。

5.山中竹春氏

カジノ抜きの代替案として、「ハーバーリゾート構想」を持つ。「ハーバーリゾート」内には、▽国際展示場、▽滞在型ホテル、▽コンサート会場、▽給食センター、▽ワクチンなど医療品配給センター、▽水素エネルギーセンター、▽新物流拠点、等を設置する。

6.松沢成文氏

IRの代替案として、山下ふ頭に「横浜開港英語テーマパーク・英語ビジネスパーク」を作る。横浜開港当時の街並みを復元した、▽横浜の歴史、英語を学べる施設、▽国際企業を誘致するビジネスパーク、を目指す。

以上の太田氏、田中氏、小此木氏、坪倉氏、山中氏、松沢氏がIR誘致反対派で、候補者に度合いの違いはありますが、それぞれがIR誘致に反対した先、山下ふ頭の活用等についての代替案を示しています。

ハマ弁はどうなる?子育て政策に対する各候補者の主張

子供のいない人が多いU30世代にとっても、自分の街の子育て政策の行方への関心が高いということは、②のアンケートから分かりました。

子育てに関する政策はどの地方都市においても関連するものです。ここでは、人口が横浜市に次ぐ政令指定都市・大阪市における、子育てに関する政策(医療費助成・小中学校給食)を横浜市と比較し、横浜市の子育てに関する政策の特徴を捉えた上で、今回の市長選挙の各候補者の主張をみていきます。

<医療費助成>

横浜市では、0歳児に対する医療費は全額助成対象ですが、1歳〜2歳、3歳〜小学3年生、小学4年生〜中学3年生の各年齢においては、保護者の所得に応じて(1)全額助成、(2)500円の自己負担あり、(3)助成対象外となります。一方、大阪市では、0歳〜18歳まで、1日あたり500円の自己負担がありますが、12歳〜18歳の子供の場合、保護者の所得制限があります。

約12年間の間、子供が500円で通院できる医療費助成制度をもつ大阪市と比較して、横浜市は、乳児期の医療費助成が手厚いのが横浜市の特徴です。(2021年6月28日現在)そのような横浜市の医療費助成制度について、次の2名の候補者が以下のように主張しています。(届出順)

小此木八郎氏

 子どもの医療費はできる限り無償化する。

山中竹春氏

 子どもの医療費を中学生までゼロにすることを目指す。

乳児期の医療費助成が手厚いだけあり、そのような手厚い助成を乳児期のみならず、より広い年齢の子供に広げることを提案している候補者が、8名中2名見受けられました。

<小中学校給食>

横浜市でも大阪市でも、小学校では全員へ給食を実施しており、大阪市は学年によって異なりますが日額247〜253円、横浜市は日額約270円(※1)と設定されています。一方、中学校では、大阪市では全員へ実施し、日額は320円なのに対し、横浜市は希望者へのデリバリー式の給食(※2)を実施し、日額は320円です。

横浜市の小学校給食と、中学校のデリバリー給食は、いずれも大阪市の小中学校給食より若干値段が高いことが分かります。加えて、中学校の給食が選択制かつデリバリー式となっており、各家庭の選択に委ねられていることも横浜市の特徴と言えます(2021年4月16日現在)。

(※1)年額50,600円、年188回を標準として算出しました。

(※2)令和3年3月までは「ハマ弁」の名称で、同様のデリバリー式給食が実施されていました。

ただし、このような選択式給食ではなく、全員への給食の実施を希望する声もあることから、今回の横浜市長選挙では、半数以上の候補者が中学校給食に言及をしています。ここからは、中学校給食について言及のある候補者の主張についてみていきましょう。(届出順)

太田正孝氏

「ハマ弁」を中止し、なるべく早く正規の中学校給食を実施する。また、子育て支援のため、小中学校の給食は無料にする。

田中康夫氏

横浜市内の農家と協力して「地域食材」の活用をし、暖かい中学校給食を実施する。

福田峰之氏

中学校において、通常は普通の給食だが、愛情弁当の日もある。朝ごはん抜きの子供には、簡単な軽食を用意する。

山中竹春氏

中学校給食は選択制を取りやめ、全員が食べる方式とし、給食費の負担軽減に取り組む。

松沢成文氏

中学校における全員給食を早期(できれば5年以内)に実現したい。(NHK、朝日)

以上のように、候補者8名中5名は、中学校給食で全員への給食を実施するよう提案しており、候補者によっては給食費負担や給食の内容、全員への給食の実施時期にも言及しています。 

自分なりに投票する理由を見つけて

この記事では、Instagramを用いて実施したアンケート結果をもとに、U30の視点からカジノ・IRや子育ての政策について、各候補者の主張を見てきました。自由回答形式で募ったアンケートには政策についての回答以外にも、「立候補者が多すぎて誰がだれだか分からない」「候補者が多くて、情報がしっかり集まらなくて困る」といった声も寄せられ、投票に行くことそのものに対するハードルもまだまだ高いと感じている人がいることもわかりました。前回の横浜市長選挙(2017年7月30日投開票)の投票率も37.2%と決して高くはありませんでした。自分のまちの未来を決める選挙のときだけでも、少し詳しく候補者の主張を調べてみると、自分なりに投票する理由が見えてくるかもしれません。

記事中で紹介したVOTE FOR YOKOHAMAのInstagramでも、候補者アンケートの回答を含めた横浜市長選挙の情報がたくさん発信されています。ぜひチェックしてみてください!

出典:
朝日新聞デジタル(2021年8月12日):「横浜市長選、『IR対応を最重視』40% 朝日世論調査」
https://digital.asahi.com/articles/ASP8D4QMCP8CULOB00C.html
選挙ドットコム:「2021 横浜市長選」https://election.go2senkyo.com/yokohama2021/
横浜市:小児医療費助成 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/iryohijosei/shoni/child.html
横浜市:横浜市の学校給食
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kosodate-kyoiku/kyoiku/sesaku/kyusyoku/syogakko-shiengakko/kyushoku.html
大阪市:子どもの医療費を助成します
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000369443.html#1
大阪市:学校給食の実施状況について
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000292260.html
NHK:「横浜市長選挙 候補者アンケート・主張・政策」https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/local/yokohama/17137/questionnaire49787.html
朝日新聞:「横浜市長選に立候補の8人 第一声で訴えた政策とは」https://www.asahi.com/articles/ASP8B663NP8BULOB010.html
日本経済新聞:「横浜市長選、最大の争点IR 各候補の主張は」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC100IE0Q1A810C2000000/
福田峰之特設ページ
https://fukudamineyuki.yokohama/#policy
林文子 横浜市長オフィシャルサイト
https://hayashifumiko.com/
横浜市会議員太田正孝
http://www.ota-masataka.com/
田中康夫 横浜市長選挙2021特設サイト
https://yokohama2021.me/
無所属 前国務大臣 おこのぎ八郎 officialsite
https://hachirou.com/
坪倉良和 公式WEBサイト
https://www.tsubokura-yoshikazu.com/
山中竹春(たけはる)OFFICIAL WEB SITE
https://takeharu-yamanaka.yokohama/
横浜市長候補 松沢しげふみ 公式サイト
https://www.matsuzawa.com/

(文=魯 良希・西田 菜緒・大林 香穂)

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