メクル第567号<旬感 V・ファーレン> MF ウェリントンハット選手(背番号28) 感謝の気持ち忘れずに

「みんなが笑顔で終われるように」と語るウェリントンハット選手

 7月17日、J2第23節のギラヴァンツ北九州戦。オリンピック中断(ちゅうだん)前の最後の試合で、待望の移籍(いせき)後初ゴールが生まれました。前半5分、毎熊(まいくま)選手からパスを受けた瞬間(しゅんかん)から「イメージができていた」と右サイドから中央へカットイン。左足を豪快(ごうかい)に振(ふ)り抜(ぬ)き、ゴールを奪(うば)いました。「V長崎に関わる人、サポーターに喜びと感謝(かんしゃ)の気持ちを伝えたくてベンチに向かって一直線に走っていった」と笑みを見せてくれました。
 この日の得点は1点にとどまりません。後半1分、味方が奪ったボールを受けるとカウンターを仕掛(しか)け、長い距離(きょり)をドリブルで突破(とっぱ)していきます。「並走(へいそう)していたエジガルジュニオ選手が見えていたし、最初はパスを考えていた。しかし、パスコースを消されたので自分で突破した」。相手に囲まれながらも今度は右足でゴールを決めました。チームは3-2と接戦(せっせん)を制(せい)して、見事勝利しました。
 V長崎への移籍が発表されたのは今年3月29日。来日後2週間のコロナ対策の隔離(かくり)期間などで合流は5月上旬(じょうじゅん)になりました。日本での初出場になったのは、5月23日の敵地(てきち)ファジアーノ岡山(おかやま)戦。そこから全試合スタメンに名を連ねています。
 日本のサッカーは「よく走る。そして攻守(こうしゅ)の切(き)り替(か)えが早い」と分析(ぶんせき)。合流前から、V長崎の試合を見て研究したり、コンディションを落とさないために、クラブが用意してくれた器具を使ったりして準備(じゅんび)に時間を掛けました。「準備ができていたからこそ早く適応(てきおう)できた」と振り返ります。
 ブラジルでは3部や4部に所属(しょぞく)する期間が長く、1部でプレーして活躍(かつやく)するという夢(ゆめ)がかなったばかりでした。しかし、選んだのは日本でプレーする「新たな挑戦(ちょうせん)」。大きな覚悟(かくご)を胸にやってきました。
 ブラジル4部に所属していたとき、給与未払(きゅうよみばら)いが半年間続きました。そして我慢(がまん)できず自らフリーになった過去(かこ)があります。「家族もいたし、幸せになるため悩(なや)んだ。サッカーをやめようと考えた時期もあった」と苦悩(くのう)の日々が続きました。「家族の支(ささ)えや周りのサポートもあり、まだサッカーが続けられている」と感謝の気持ちを忘(わす)れません。
 いろんな経験(けいけん)をして今があります。色紙には「Gratidão a Deus!」(ポルトガル語で「神様に感謝」)。「神様がいなければ、よい出来事は起きていないし、今がないと思っている。全てに感謝したい」
 「前半戦の連勝しているときの勢(いきお)いを後半戦も発揮(はっき)したい。それができれば『昇格(しょうかく)』が見えてくる。最後にはみんなが笑顔で終われるように」-。思いを胸(むね)に戦(たたか)い抜(ぬ)きます。


© 株式会社長崎新聞社