2番手にコンマ8秒差の驚速タイム。前回もてぎの失敗からリベンジを果たしたModulo大津弘樹の変心【鈴鹿GT500予選】

 Modulo NSX-GTが今季初のポールポジションを獲得した2021年のスーパーGT第3戦『FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE』。公式予選Q2のアウトラップでスピンを喫するハプニングがありながらも、最後はきっちりとトップタイムを記録した伊沢拓也のリカバリー力も見事だったが、同時に予選を終えたパドックでは、大津弘樹がQ1でみせた“スーパーラップ”の話題で持ちきりだった。

 今回もQ1から接戦の展開になるかと思われたが、その中で大津は1分44秒733をマーク。同じホンダNSX-GTでダンロップタイヤを履くRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京)が2番手につけたが、その差は0.857秒と、近年のスーパーGT(GT500)ではなかなか考えられない大差となった。

 さらに大津が記録したタイムは、2018年第3戦(5月末開催)に野尻智紀が記録したコースレコード(1分44秒319)に、わずか0.4秒差に近づくもの。当時はスプーンカーブ方面から非常に強い風が吹くコンディションで“追い風”の影響をかなり受けた中で記録されたもの。

 それに比べて、今回は風もほとんどなく、雨上がりで決してベストとは言えないコンディションだったことを考えると“スーパーラップ”と言っても過言ではないだろう。

「コンディションに関して言うと、やはり雨上がりということで決して良くはなかったです。今年はタイヤの開発を16号車と一緒にやっていることもあって、いろいろな部分での良し悪しの線引きがハッキリと出来ているのと、2つのチームの意見を取り入れているので、開発のスピードも非常に早いです」

「そこに今回はチームとしても一発には自信がある鈴鹿で上手く合わせこめて、さらに皆さんの頑張りもあって、結果を出すことができました。Q1のアタックは自分でも良い走りが出来たと思います」

 そう自身のアタックを振り返った大津。ここ最近はダンロップタイヤのパフォーマンスアップが顕著に見られ、それが今回のポールポジション獲得の原動力になったのは確か。だが、彼自身の部分も前回のもてぎ大会から取り組んできたことがあるという。

「僕自身、カテゴリーを問わずに今年の前半戦全てを振り返ると、あまり良い成績を残せていませんでした。さらにスーパーGTでは前回のもてぎの終わり方が、非常に悔しいものでした」

 7月の第4戦もてぎでは後半5番手を走行するも、後方から猛烈な勢いで迫ってきたARTA NSX-GT(野尻智紀)との攻防戦で焦りが出てしまい、混走中のGT300車両と接触。そのままリタイアとなってしまったのだ。

「自分の中で、絶対にやってはいけないと思っていたミスでした。このインターバルの間に、以前から一緒に組んでいるトレーナーさんと、どうしたら今よりもレベルアップできるかをすごく考えました」

 もてぎ大会からの約1カ月間で、いろいろとテーマを決めてトレーニングをしてきたという大津。そこで重点的に鍛えてきたのが“集中力”だったという。

「メンタル面もそうですし、集中力をどう保つかという部分に重きを置いていました。それで言うと、前回のもてぎのレースでは自分自身がいっぱいいっぱいになって、冷静な判断ができずにぶつかってリタイアになってしまいました。あれは(自分自身を)変えなきゃいけないなと思ったレースでしたね」

「普段のトレーニングでは“追い込む”とか“走り込む”とかはやっていましたけど、集中力の上げ方とかには目を向けてこなかったので……短期間ではありますけど、意識を変えられたことが大きかったと思います」

「そういう意味では、今回の予選では自分たちが持っているパッケージのパフォーマンスを、どうすれば最大限引き出すことができるかということに集中できました。(インターバルの間に)やったことは無駄ではなかったのかなと思います」

 決勝も、このままポールポジションから逃げていくレースを見たいところ。しかし、天気が不安定なところもあり、レース展開に関しては全くの未知数な状態だ。

 いずれにしても、GT500に参戦して2年目の大津が、大きく成長した姿を、この予選で垣間見ることができたのは、間違いないだろう。

2021スーパーGT第3戦鈴鹿 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹)

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