ドライバーズサーキットで魅せた強者の予選アタック。決勝の予想は誰にもつかない?【GT300予選あと読み】

 本来であれば、真夏の耐久の祭典である鈴鹿10時間の予選が開催される予定だった8月21日。延期となったスーパーGT第3戦鈴鹿はこの日程で開催されることになったが、事前の予想とは大きく異なり、予想外の天候のなかでの予選日となった。

 時折雨が降り、曇天のもと路面温度は事前予測より大幅に低い。そんなコンディションと、スーパーGTの中盤戦ならではサクセスウエイトの厳しさが、ドライバーズサーキットの鈴鹿ならではのGT300クラスの予選順位を演出した。その要因は何か、果たして決勝はどうなるのだろうか。

 気温30度越え、路面温度も50度ほどまで上昇し、酷暑のなかで行われた第4戦ツインリンクもてぎ。8月下旬の開催で、毎年酷暑のなかで熱いレースが展開されてきた夏の鈴鹿であれば、多くのタイヤメーカーが50度ほどの路面温度を予想する。

 ところが、フタをあけてみればこの週末の荒天の影響か、路温は上がらない。これで“ハズした”メーカーがあったと多くのGT300関係者が口を揃えた。また、シーズン4戦目でランキング上位陣のサクセスウエイトは非常に厳しくなってくる。今回、GT300クラスのQ1のA組、B組ともにランキング上位陣は多くのチームがQ2進出を果たせなかった。

 一方で、今回好調だったのはダンロップタイヤ勢、ヨコハマタイヤ勢。もともと鈴鹿を大いに得意とするSUBARU BRZ R&D SPORTの快走、コース特性でもドライバーのスピードでも、この速さは予想どおりとも言えたたかのこの湯 GR Supra GTのQ1での走りは、まさに必然とも言えた。Q2でも2台のポールポジション争いに注目が集まった。

 ここで「山内はさすが」と口をそろえるのは、Max Racingの田中哲也監督とHOPPY team TSUCHIYAの土屋武士監督。SUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝は、きっちりと良い流れを継ぎ、一発のタイムを決めてみせたのだ。一方で、たかのこの湯 GR Supra GTのアタッカーを務めた三宅淳詞は、日立Astemoシケインまでノーミスで走りながら、シケインでわずかにミスがあったのがこの結果に繋がったのだという。

「でも三宅がメチャクチャ甘いブレーキで“置きに”行っていたら、逆に怒りますよ。2番手を獲りにいっているわけではないし、ポールが欲しかった。しかも公式練習から自分が速いコーナーだったんだから」と田中監督は、逆に三宅の攻めの姿勢を褒めた。

2021スーパーGT第3戦鈴鹿 三宅淳詞と話すHOPPY team TSUCHIYAの土屋武士監督

■ドライバーズサーキットで輝きを見せたベテランたち。決勝では5号車に注目

 今回、サクセスウエイトや路温の影響により戦力が拮抗するなか、このドライバーズサーキットで“魅せて”くれたのは、4番手のJLOC ランボルギーニ GT3も小暮卓史、元嶋佑弥、鈴鹿では好調とみられていた5番手PACIFIC NAC CARGUY Ferrariのケイ・コッツォリーノや横溝直輝、6番手につけたグッドスマイル 初音ミク AMGの谷口信輝/片岡龍也、muta Racing Lotus MCの加藤寛規、さらにQ1のA組で2番手につけたYogibo NSX GT3の道上龍、初のQ1突破を果たしたTeam LeMans Audi R8 LMSの本山哲、Q1のB組で3番手につけた荒聖治といった、スーパーGTはもとより、世界中のレースで多くの結果を残してきたベテランたちだ。

「公式練習はオーバーステアでしたが、アジャストしていって良くなりました。アタックの時に、(佐藤)蓮がスプーンで飛び出したので、そこで躊躇してしまってコンマ1秒遅くなっていました。それがなければA組のトップに出られたかも。良い感じで合わせ込めました」というのは道上。チームメイトの密山祥吾も、「道上さんの130Rの走りはすごい」と舌を巻く。

2021スーパーGT第3戦鈴鹿 Yogibo NSX GT3(道上龍/密山祥吾)

 また、「チームとして初めてQ1を突破できて、チームとしても良かったと思う。初めてこのクルマでドライの鈴鹿を走ったので、どれくらいいけるかつかみどころが難しかったけど、チームとして進んできたなかで、ベストが出せた」と本山はチームの進歩とともにQ1突破を喜んだ。

「予選は結構楽しかったです。クルマのバランスもタイヤも良かったので。『これはまあまあ上を狙えるかな』と思って走っていて、3番手というのを見たときには『まだ速いヤツがいるのか』と思いましたけどね(笑)。もてぎからパフォーマンスは調子が良いです」というのは荒聖治。ひさびさにベテランたちから、明るいコメントを聞くことができた。

 戦力が拮抗したことで、速い、結果を残してきたドライバーたちがするべき仕事をした結果、このドライバーズサーキットの鈴鹿での予選順位に繋がった。それが見えた予選は、非常に見どころが多かったのではないだろうか。

2021スーパーGT第3戦鈴鹿 Team LeMans Audi R8 LMS(本山哲/片山義章)

 では、明日の決勝はどうなるだろうか……? 「分からない」という声がほとんどだ。それは雨が降るかもしれないからだ。雨が降った場合、また予想に反して天候が大きく回復し、晴れ間が見えて路面温度が急速に上がった場合、「戦力図は大きく変わる」だろう。

 そしてトップ3のなかで、「マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号が勝つかも」という予想もあった。それは、マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号がこの鈴鹿を大いに得意としており、そして“伝家の宝刀”とも言えるタイヤ無交換作戦をここで何度も成功させているからだ。今日のコンディションが続いた場合は注目の存在とも言えるだろう。

 また、雨交じりとなった21日の公式練習で「ほとんどのチームがロングランをできていない」という状況も注目すべきポイントだろう。レースはまったく予想がつかなそうだ。

2021スーパーGT第3戦鈴鹿 平木湧也と平木玲次(マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号)
2021スーパーGT第3戦鈴鹿 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)

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