クラッシュ直後の出火と煙のなかでコクピットから出られなかったModulo伊沢拓也「オフィシャルさんのお陰で助かった」

 スーパーGT第3戦鈴鹿、決勝レースの5周目、伊沢拓也がステアリングを握ってトップを走行していた64号車Modulo NSX-GTにトラブルが発生した。シケインのブレーキングで止まれず、そのまま伊沢はスポンジバリアにクラッシュ。スポンジに引火して大きな煙が上がり、火が出た車内から伊沢も抜け出せない状況だったが、鈴鹿サーキットのオフィシャルの迅速な作業のお陰で伊沢は無事に救出され、無傷だった。

 レース後、メディカルセンターから戻ってきた伊沢に、クラッシュの状況を聞いた。

「マシントラブルです。シケインのブレーキングでブレーキを踏んだ瞬間です。止まらずにまっすぐ行きました。当たった衝撃としてはかなり減速していた状態だったのでそこまでではなかったですけど、ひとまずバックしようとバックギヤが入らなくて、そうしたら火が出てしまって、消化器スイッチを押してコクピットを出ようとしたらドアが開かなくて、ちょっとヤバイなと」

 クラッシュバリアに真っ直ぐ突っ込んだ伊沢の64号車は、周りをスポンジに囲まれドアが開かなくなってしまった。そして、マシンから出た火はスポンジバリアに引火し、黄色い大きな煙が立ち上り、場内実況ではスタンドの観客に『煙を吸わないようにしてください!』という異例の放送が繰り返された。

「ドアが開けられずにコクピットから出れなくなって、あそこでオフィシャルさんたちが開けてくれなかったら、僕はもう、燃えていたかもしれない。煙ももっと吸っていたかもしれない」と伊沢

 ホンダの佐伯昌浩GTプロジェクトリーダーによると、64号車は右フロントのブレーキにトラブルが起きたとのことで、その原因はこれからの調査になるという。また、マシンから出火してモノコックが大きな火災に遭っていることから、ガレージに戻ってモノコックのチェックが行われることになる。

 鈴鹿サーキットのオフィシャルの迅速な作業で炎と煙にまみれたコクピットから脱出した伊沢は、メディカルセンターに向かった。

「身体に怪我はないのですが、煙を吸っていたので、メディカルセンターに行って酸素吸入をしてきました」

 幸運にも身体は大事に至らなかった伊沢。アクシデントのことを含めて、今回のレースにも悔しさを見せる。

「決勝でのペースも良さそうだったので、悔しいですね。大きなチャンスがあったと思いますけど、まあ、こういう職業なので。クルマのスピードが出せたことが僕らにとってはすごく大事なことなので、次のSUGOも頑張りたいですけど、クルマを直さなきゃいけないというところでは、火が出ているのでモノコックまでダメージがいっている可能性があるので、心配です」

 レース後、伊沢は自分を助けてくれたオフィシャルにお礼を伝えたく、GTAに依頼。シケインで作業にあたった鈴鹿サーキットのオフィシャルたちは快く、伊沢の元を訪れた。

「去年のF1でもありましたけど、最近のレーシングカーで火が出るということがあまりないなかで、運悪く火が出てしまって、自分がコクピットから出れなくなって、ヤバイって一瞬思ったんですけど、あれだけ煙が出ているなかですぐにクラッシュパッドをどけてくれなければ、もっと煙を吸っていたかもしれない。まだレーシングカーが走っているなかで、素早い作業で助けてくれたのでご挨拶をさせて頂きました」

 パドックのガレージに来てくれたオフィシャルに、伊沢は頭を下げて感謝の意を伝えた。

レース後、集まってくれたオフィシャルに感謝の意を伝える伊沢拓也
まさに縁の下の力持ち。オフィシャルのお陰でドライバーが救われ、スムーズな進行が行われている

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