<社説>ワクチン接種遅れ 政府は全世代実施を急げ

 新型コロナウイルスの県内感染者数が拡大し続ける要因の一つとして、若年層の感染増が挙げられる。背景には、若年層でワクチン接種が進んでいない現状がある。 その遅れは全て若者のせいだろうか。本紙が若者を対象に実施したアンケートによると、接種に否定的な人はわずか16%で、迷っている人は32%、肯定的な人が52%と過半数を占めた。接種率が低いのは、自治体によって、まだ接種の対象となっていなかったり、予約が埋まっていたりするなど行政の対応が遅れている実情が背景にある。

 政府は、県内で人口に占める感染者数の割合が全国最悪である沖縄の危機的状況を重くみて、若者を中心に全世代で接種が迅速に実施できる施策を講じるべきだ。県内自治体と連携し、高い年代からワクチン接種券を送るやり方や予約が取りにくい現状を改め、例えば全世代が一挙に接種できる大規模会場を設けるなどの対策を取ってほしい。

 県内では若い世代の感染が深刻である。県の疫学統計・解析委員会によると、7月12~8月15日までの期間、全感染者に占める20~30代の割合は4~6割と高いレベルで維持している。県内病院の入院者の中には若者が重症化するケースが出始めている。

 こうした傾向に歯止めを掛けて感染拡大や重症化を抑制するにはワクチンが有効だが、若い世代の接種は進んでいない。県が14日現在で発表した年代別接種率によると、2回目の接種を終えた人は20代が6.79%で最も低く、続いて30代が10.09%で低かった。

 先の本紙のアンケートでは、接種に前向きな若者が過半数を占めたものの、「居住する自治体で予約が始まっていない」「打ちたいけど予約が取れない」などの声が多かった。行政は、打ちたい若者が速やかに接種できる仕組みに改めるべきである。

 接種に否定的な人や迷っている人に対しても行政はSNSを駆使して副反応などについて正確な情報を発信することも必要だろう。接種のメリットとデメリットを見極め、打つかどうか、的確な判断を促すことも大切である。

 一方、新型コロナに感染した妊婦への対応も重要である。千葉県では、30代の妊婦が少なくとも9カ所の医療機関に受け入れを断られ、自宅で早産し、赤ちゃんが死亡するという事態が発生した。県内でも妊婦の感染者が増えており、対策は待ったなしである。

 県内の妊婦の陽性者数は5月35人、6月30人、7月34人と推移し、8月は1~5日だけで32人に上った。7月20日~8月5日までに陽性になった妊婦の出産は5件あった。妊婦は感染すると早産などのリスクが高まる。自宅や宿泊施設では対応できない。

 生まれた赤ちゃんを濃厚接触者として感染対策して受け入れる新生児集中治療室(NICU)を含め、妊婦の専用病床の確保が急務だ。

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