2位の8号車トヨタ中嶋一貴「7号車はウイナーにふさわしい」/ル・マン24時間

 8月22日、フランス、ル・マンのサルト・サーキットで行われたFIA世界耐久選手権(WEC)第4戦、第89回ル・マン24時間レースの決勝レースがゴールを迎えた。TOYOTA GAZOO Racing(以下TGR)の2台のGR010ハイブリッドはワン・ツー・フィニッシュでこの歴史的なレースを制し、チームはル・マン24時間レース4連覇。そして新たなハイパーカーというカテゴリーでの、初めての勝者となった。

 マイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスの3名が駆る7号車GR010ハイブリッドは過去数年にわたり、この伝統的大イベントで最速を誇りながらも勝利を逃してきたが、ついに表彰台の中央に立った。

 昨年のウイナーであるセバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、ブレンドン・ハートレーの8号車GR010ハイブリッドも2位で続いた。7号車の勝利により、TGRは今季ここまでの4戦全勝を続けている。

 24時間にわたる長いレースの後半戦、2台のGR010ハイブリッドは燃料システムのトラブルに見舞われ2番手走行の8号車は給油しても予定していた周回をこなすことができなくなった。当初の予定よりも短い間隔で給油ピットを行いながら、チームは懸命に解決策を模索し続けた。

 その時点で3番手の36号車アルピーヌA480・ギブソンとは4周の差がついていたが、問題の解決には時間がかかった。チームは懸命な努力で対策を見出し、ドライバーがコースの決められた場所で特定のセッティングを施すことで、8号車は予定された周回をこなすまでに戻った。

 その後、首位の7号車にも同じトラブルが襲いかかったが、8号車で施した対策法を可夢偉とロペスが理解して迅速に対処したことで、7号車は充分に開いていた後続との差を失わずに済んだ。ドライバーとレースエンジニアとの緊密なコミュニケーションにより、その後はトラブルを最後までコントロールすることができた。

 最終スティントは、7号車は可夢偉、8号車は一貴がドライブ、レース最後の数周は2台によるランデブー走行となった。スタートから24時間が経過した現地時間16時過ぎ、多くの観客が見守る中、2台は並んで波乱に満ちた長いレースのチェッカーを受け、TGRは1-2フィニッシュという最高の形で、ハイパーカーの歴史にその名を刻んだ。

ワン・ツー・フィニッシュを達成したトヨタGAZOO Racing

「非常に困難な困難な状況下での激しいレースでしたが、これぞまさにチームでつかみとった勝利です」

 そう語るのは、トヨタGAZOO Racingの村田久武WECチーム代表だ。

「ドライバーにはたくさんの難題を課すことになってしまいましたが、一切のタイムロスを生ずることなくやり抜いてくれました。彼らの技量には度肝を抜かれました」

「この結果は、勝つために決して諦めず、やれることをすべてやる、そんなチーム全員の努力の賜物です。チームメンバー、パートナー企業の皆様、トヨタ自動車の仲間を含めたすべての関係者の皆様に心より感謝申し上げます」

「また、各カテゴリーで勝利された皆様、本当におめでとうございます。そして、終始我々と争い、このレースの精神を体現してくださったハイパーカーカテゴリーのアルピーヌとグリッケンハウスの皆様に感謝致します。

 TGRからル・マン24時間レースに挑んだ、6名のドライバーの決勝後のコメントは以下のとおり(※一部コメントは他の記事と重複します)。

■「チームの働きには脱帽」とセバスチャン・ブエミ

■7号車トヨタGR010ハイブリッド

●小林可夢偉

「ル・マンの勝者としてここにいるというのは、最高の気分です。ここに至るまでに、何年も何年も、さまざまな経験を経てきましたし、その中には本当に辛いものもありました」

「ル・マンに勝つためには運が必要だと常々感じていましたが、今日も運が必要でした。最後は走り続けるために、特別な操作をしなくてはなりませんでした」

「終盤の7時間は、生き残るために死力を尽くして戦う必要があり、とても難しい作業でした。通常であればそこでレースは終わりでしたが、チームが本当によくやってくれて、正しい判断で導いてくれたおかげで、なんとか最後まで走りきることができました」

「チームメイト、車両担当やエンジニアはみんなこのレースウィーク、素晴らしい仕事を成し遂げてくれました。彼ら全員に感謝します。

●マイク・コンウェイ

「大変なレースだった。最後の6時間は、車両に問題があり、それが重大なトラブルに繋がりかねないことをよく分かっていた」

「しかし、チームが解決法を見出してくれたことで、最後まで走り続けることができた。ワン・ツー・フィニッシュは彼らの努力の結果だ。苦労しただけに、本当に格別な勝利だ」

「このル・マン24時間というレースは、決して容易ではない。首位を快走していても、いつ何が起こるか分からない。多くのスティントを走り抜き、ずっとハードワークをこなしてくれたチームメイトと、懸命な努力で支えてくれたドイツ・ケルンと日本の仲間のおかげでこの結果を勝ち取ることができ、本当に感謝している」

「これでようやく肩の荷が下りたので、勝利の味をじっくりと噛みしめたいと思う」

●ホセ・マリア・ロペス

「ここ数年、我々にとってのル・マンは本当に厳しい戦いが続いていたので、やっと勝つことができたことは夢のようで、信じられない」

「我々は何年もこの偉大なレースに挑んできたが、なかなか勝つことができなかった。それらの経験があればこそ、今日の勝利は本当に格別なものになった」

「マイクと可夢偉は私にとって兄弟のような存在だが、彼らはひとたびレースカーに乗れば、信じられないようなパフォーマンスを見せてくれる」

「もちろん我々をバックアップしてくれる日本とドイツ・ケルンの仲間が居てこその結果であり、我々は今日栄光を手にすることができたが、それは彼らなしでは成し遂げられなかった。本当にありがとう」

7号車GR010ハイブリッド

■8号車トヨタGR010ハイブリッド

●中嶋一貴

「まず、勝利を挙げた7号車のクルーとチームに最大の祝福を送ります。この勝利はチームの勝利であり、8号車もその一員として、とても嬉しいです」

「7号車は何年も運に見放されてきましたが、やっと勝利を手にしました。彼らはル・マンウイナーにふさわしいです」

「我々8号車にとっては、なかなか難しいレースになりましたが、トラブルを抱えながらもなんとか最後まで走りきることができました。対処法を見出してくれたエンジニアやメカニック、そしてチームメイトに感謝します。本当に素晴らしいレースでした」

●セバスチャン・ブエミ

「1周目のアクシデントがあっただけに、2位でフィニッシュできたことに満足している」

「もちろん、目指していたのは勝利だが、それでも今日はトヨタにとって素晴らしい一日になった。初めてのハイパーカーによるル・マン挑戦でワン・ツー・フィニッシュという、目指していた目標を達成することができた。7号車が勝利したというのもとても嬉しいことだ」

「いくつかの技術的な問題に見舞われたが、チームがうまく対処してくれた。余裕はまったくなく、すべてを完璧にこなす必要がありったが、チームの働きには脱帽だ」

「7号車の友人達は何度も悔しい思いをしてきただけに、この勝利は我が事のように嬉しい」

●ブレンドン・ハートレー

「ル・マンではいつも信じられないようなことが起こるが、今年も例外ではなかった」

「我々8号車は1周目からアクシデントに巻き込まれた。そこから追い上げてワン・ツー・フィニッシュを果たせたのは驚くべきことだ。トラブルを解決しなければ、一時は最後まで走れるかどうかも分からない状態だった」

「ずっと不運が続いていた7号車の勝利は、本当に嬉しい。我々はみんな、本当に仲の良い友人同士で、その友人が勝利を挙げて喜んでいるのを見るのは良いものだ。チームにとっても素晴らしい勝利となった」

2位でフィニッシュ後、パルクフェルメにクルマを停めピット/表彰台へと向かう8号車GR010ハイブリッドの中嶋一貴

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