【全米OP】大坂なおみ「復活連覇」を後押しする2つの〝プラス材料〟

前哨戦で3回戦敗退した大坂なおみ(ロイター)

女子テニス世界ランキング3位の大坂なおみ(23=日清食品)が4大大会の全米オープン(30日開幕、ニューヨーク)で2連覇を狙う。今年は2月の全豪オープンを制してグランドスラム4勝目。いまや年間60億円以上を稼ぐ超一流プレーヤーとなる一方で、コート外では大きな難問を抱えている。最近は会見拒否や「うつ告白」で波紋を広げ、先週の前哨戦でも涙を見せるなど精神面の不安は拭えない。女王は〝第2の故郷〟で復活した姿を見せることができるのか――。

大坂のコート上の強さには誰も異論はないだろう。時速200キロ近いサーブに強力なフォアハンド。今大会も絶対的なV候補であることは間違いない。一方で、最大の不安がメンタルだ。5月の全仏オープンでは選手の「メンタルヘルス」を理由に会見拒否。大会を棄権するとともに長年〝うつ状態〟に悩んでいたことを告白した。

金メダルを狙った東京五輪は聖火リレー最終走者を務めて脚光を浴びたが、3回戦でストレート負けを喫すると取材エリアで涙。また、前哨戦のウエスタン&サザン・オープン(シンシナティ)の公式会見では海外メディアの質問に号泣し、会見が中断となる事態に陥ってしまった。一連の騒動の原因となったのは「メディア対応」によるストレスだ。

大坂は前哨戦の初戦勝利後に「(負けた時の)ひどい見出しが怖かったのだと思う」と自己分析したように、この先もいつ心が乱れても不思議ではない。しかし、長年にわたって大坂を見てきたDAZNテニス中継の解説者・佐藤武文氏(50)は「全米OPが大坂選手を救うかもしれません」とむしろ期待を寄せる。一体どういうことか。

「最近はメディアにセンシティブになっていますが、試合でも流れるようなプレーが影を潜め、結果を追い求めてショットだけで完結させるプレーが見受けられます。今こそ純粋にテニスを楽しむことが大事。そう考えると、ジュニア時代から慣れ親しんだ地元が後ろ盾になっているのは精神的に大きいでしょう」

昨年の大会では人種差別への抗議運動を展開し、黒人被害者の名前入りマスクを着用。4大大会では原則として特定の思想やメッセージを身につけてはいけない規則があったが、全米テニス協会(USTA)は特例措置で制限を撤廃し、大坂の主張を後押しした。さらに今大会の本戦は制限なしの有観客開催となるため、地元ファンの大声援も背中を押すことは間違いない。

また、コートの種類もプラスの要素となる。ツアーはクレー(赤土)、グラス(芝)のシーズンを経て、大坂が得意なハードコートに移行。佐藤氏は「会場のビリージーン・キング・ナショナル・テニスセンターは昨年から『レイコールド』という新ブランドになりました。大坂選手はその最初の大会で優勝しているので、親和性は高いと思います」と好材料に挙げている。

昨年大会の準決勝では交際中の米人気ラッパーのコーデーが見守る中で快勝。コート上のインタビューで「ニューヨークは私の第2の故郷。このコートが大好きです」と笑顔で語った。〝心の病〟に悩まされ、目に見えぬ敵と闘い続けている大坂にとって、多くの味方がいる今大会は息を吹き返す絶好の転機となるかもしれない。

© 株式会社東京スポーツ新聞社