ADJ、重量物・長距離輸送ドローン用ハイブリッド動力量産機開発に向けたシリーズAラウンド資金調達実施

エアロディベロップジャパン株式会社(以下:ADJ)は、シリーズAラウンドの資金調達を実施、その資金を用いて、創業時より開発しているガスタービン動力と発電機を組み合わせたハイブリッド動力システムの量産機開発に着手した。量産機開発にあたり日本の大手航空エンジンメーカーでジェット・ロケットエンジン開発をけん引してきた太田豊彦氏をCTOに迎えた。ADJは2022年内にハイブリッド動力システムおよび同システム搭載ドローン販売開始を目標としており、ドローンサービスにおける協業パートナー候補の募集を開始するという。

■大型ドローン市場が抱える課題

これまで、ドローンといえば総重量25kg以下の小型機がほとんどで、用途も測量・空撮・検査といったものに限られてきた。そのような中、欧米を中心に、重量物・長距離輸送を可能にする大型ドローンの実用化、さらには空飛ぶクルマ(以下:UAM)に対する期待が高まってきている。その流れは日本にも波及しており、2022年に大型ドローンの目視外・有人地帯上空飛行の実現に向けた法整備が一気に進むと言われている。

一方で、大型ドローン実用化のボトルネックと言われているのが、動力源の部分だ。既存ドローンの多くはリチウムイオンバッテリーを使用しているが、現状のリチウムイオンバッテリーは単位重量当たり発電量(kWh/kg)が大型ドローン用途としては十分な大きさとは言い難く、飛行時間を伸ばそうとするとペイロード(搭載重量)が小さくなり、ペイロードを大きくしようとすると飛行時間が短くなってしまうという。重量ドローンが長時間飛行するために、より単位重量当たり発電量の大きい動力源開発が求められている。

■ADJハイブリッド動力ユニットと創業のきっかけ

ADJが開発しているのが、ガスタービンと小型発電機を組み合わせたハイブリッド動力ユニットで、ガスタービンを高速回転(1分間あたり9〜10万回転)させて発電機を駆動させるこのアプローチによって、単位重量当たり発電量を大きくすることができる。

一般的なリチウムイオンバッテリーの単位重量当たり発電量が0.2〜0.25kWh/kg程度であるのに対し、ADJハイブリッド動力ユニットは1kWh/kgを超えることができると計算されている(同社試算)。リチウムイオンバッテリーの約5倍となる単位重量当たり発電量をもって、飛行時間とペイロードの両立を目指すとしている。

■太田氏の招聘とハイブリッド動力システム量産機開発開始について

ADJは創業以来、ハイブリッド動力システムの試作機開発を進めてきたが、2021年6月にはオーストリア製10kWガスタービン3基と発電機を組み合わせたハイブリッド動力ユニット、およびAC200V高電圧対応プロペラ用モータ・ESCを合わせたハイブリッド動力システムを搭載した総重量約80kgドローンの浮上試験を実施。無事、浮上性能を確認し、試作機開発に成功した。

ADJは、試作機開発に成功したハイブリッド動力システムの国内量産化を目指して、目標とする単位重量当たり発電量1kW/kg実現に不可欠であるガスタービン発電機の独自開発を進めるべく、ガスタービン開発において高速回転機体の設計技術を持つ太田氏をCTOとして招聘。試作機に比べ単位重量当たり発電量・耐久性ともに優れる量産用の実機開発に着手した。

太田氏の知見と試作機開発で培ったノウハウを活かし、2022年内にハイブリッド動力システムおよびハイブリッド動力ドローンの量産機を市場投入できるよう、チーム一丸となって開発を進めていくとしている。量産機の目標スペックは以下を想定している。

  • 離着陸総重量:150kg
  • ペイロード:50kg
  • 飛行時間:1時間

■量産機開発に向けて資金調達を実施

今回、量産機開発にあたって必要となる資金を、ドローン事業をすでに展開している、あるいはこれから参入する予定の事業会社を引受先とする第三者割当増資によって調達した。引受先となった事業会社3社はいずれも、大型ドローンを用いたドローンサービス(DaaS=Drone as a Service)事業の協業パートナーとなる。

■開発拠点立上げとエンジニア採用について

量産機開発に集中するため、今回の資金調達に合わせて武蔵小金井に開発拠点を新設した。拠点立上げとあわせ、UAM開発において日本でも有数の知見を有している法政大学・御法川研究室(小金井キャンパス)が協力した。現在、太田氏を中心にエンジニアチームを拡充しており、採用を進めている。

■一気に盛り上がるUAM市場とADJの位置付けについて

最近、急速にポスト大型ドローンとしてUAMのニュースが増えている。その背景には、欧米を中心に「電動航空機」の開発競争が始まり、UAMの2023年実用化が見込まれていること、また2025年大阪万博テーマに「ドローン・UAMと水素」が掲げられていることなどが関係しているという。こうした流れの中で、脱炭素・ゼロエミッションに対応できる動力が求められている。

「電動化」「脱炭素」という世界的な潮流変化に、スピーディに対応できる可能性を持っているのが、ハイブリッド動力システムで、ガスタービンの燃焼器部分の仕様変更によってバイオ燃料、液体水素にも対応することができる。

ADJは、欧米を中心に立ち上がろうとしている、エコフレンドリーなUAMマーケットを見据え、先ずは足元の大型ドローン向け動力システムの開発を進めていくという。さらにその先には、海外ドローン・UAMメーカー向けにハイブリッド動力システムを供給すると同時に、国産UAMメーカー創出に向け、優位なポジションを築くことを視野に入れている。

■ハイブリッド動力ドローンサービスの協業パートナー募集について

ハイブリッド動力システムおよびハイブリッド動力ドローン量産機は、2022年内販売開始を目標に開発を進めている。現在、ハイブリッド動力ドローン完成機体の組立てパートナー、MRO(Maintenance, Repair & Overhaul)パートナー、機体レンタルパートナー、そして機体を用いてドローンサービスを提供するDaaS事業パートナーの募集を行っている。

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