【東京パラリンピック】“安心安全”な開催 専門家は可能の見解も…「国民が納得するかは別の話」

開会式は盛り上がったが…(ロイター)

無事に乗り切ることができるのか。東京パラリンピックの開会式が24日に国立競技場で行われ、選手入場やさまざまな企画で祝祭ムードを演出した。一方で、この日の東京都の新型コロナウイルス新規感染者は4420人と依然として厳しい数字となり、ニュージーランド選手団は開会式を欠席する事態となった。こうした状況に感染症に詳しい専門家は「大会は開催できる」としつつも「国民感情は別問題」と指摘。東京五輪以上に「安心安全」な感染対策が求められている。

1年延期となっていたパラアスリートによる祭典が幕を開けた。今大会は161の国や地域と難民選手団から史上最多の4403人が参加。日本選手団は前回のリオ大会ら約2倍の254人となった。開会式では選手入場やさまざまな企画で祝祭感を演出したが、目を向けなければならない現実もある。

この日、東京都では新たに4220人のコロナ感染を確認。重症者は前日23日より4人減ったものの、268人と楽観できる数字ではない。実際にニュージーランド選手団は開会式を欠席し、江戸川区は小中学生を対象にした「学校連携観戦プログラム」への参加を中止した。コロナ禍のパラ開催を専門家はどう見ているのか。

感染症に詳しい医療ガバナンス研究所副理事長で内科医の上昌広氏(52)は「私は東京五輪を踏まえて、開催できると思いますよ」と話す。〝開催可能〟と判断した理由として、五輪関係者の陽性率に注目。「大会関係者は1・28%。これは決して低くないのですが、選手は0・24%と大会関係者の5分の1でした。多くの選手がワクチンを打ち、毎日検査をしてバブル方式で隔離したからです」と分析した。

ただ、上氏は「安全にできるか、国民や世界が納得するかは別の話」とも指摘する。パラ関係者の感染が相次ぎ、入院者が続出した場合は「(国内の感染者が)入院できず早産児が亡くなり、在宅死するケースが増えています。『アスリートは特別か』『その最中にやるのか』という声が出て当然ですし、世論は厳しいですよ」と世間の反発の高まりを危惧している。

パラの場合は感染した場合に重症化するリスクが高い選手もいるため、東京五輪以上に万全の感染対策が必要となる。上氏は「五輪のノウハウがありますからね。感染対策において、東京五輪よりも悪い数字(陽性率など)を出した場合、私は東京五輪だけ一生懸命でパラリンピックはどうでもいいんだという印象を受けますよ。本当にそうなれば恥ずかしいことです」と運営サイドの対応にクギを刺した。

この日、東京パラリンピックの開催中止を求める有志らが国立競技場付近で抗議デモを行い「パラリンピックやめろ」「今すぐやめろ」「パラリンピック反対」「強行するな」などと訴えた。デモ開始直後は周辺警備にあたった警察と〝衝突〟。「警察は抗議活動の妨害をやめろ」「警察帰れ」と怒号が飛び交い、現場が大混乱になる一幕もあった。

東京五輪に続いて開催を巡る賛否両論が渦巻く中、パラリンピックは無事に閉会式を迎えることができるのか。楽観はできない状況にあるのは確かだ。

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