北信越総体 総評 2年ぶりの「夏」に躍動 長崎県勢 メダル、8強以上増と健闘

2大会連続優勝を飾ったソフトボール男子の大村工。表彰式終了後、集合写真に納まる選手たち=福井県敦賀市きらめきスタジアム

 7月25日から北信越5県を主会場に30競技を実施した全国高校総合体育大会(インターハイ=北信越総体)は24日、全日程を終了した。昨年は史上初の中止となっていたため、2年ぶりの開催。新型コロナウイルス感染拡大の不安と闘いながら、高校生アスリートの大切な「夏」の大舞台が設けられた。主催者の努力に敬意を表したい。
 その中で長崎県勢は五つの優勝をはじめ、16個のメダルを獲得。36種目で8強に入った。過去最高成績や数年ぶりの入賞も相次ぎ、直近の2019年大会(優勝4、メダル12、8強以上31)を上回る活躍を見せた。

■好成績続々

 ソフトボール女子(4校同時)の長崎商、セーリング女子の420級とコンバインドの長崎工はいずれも初優勝。テニス男子個人ダブルスの今里翔吾・鳥井俊作組(海星)は、県勢として初めてメダルを獲得した。ソフトボール男子を2大会連続で制した大村工、バドミントン男子団体3位の瓊浦、ホッケー女子8強の川棚はそれぞれチーム最高タイの成績だった。
 このほか、競泳男子50メートル自由形の森山遼(長崎南山)は4位に入り、競泳勢として3大会ぶりの入賞者となった。重量挙げ男子の諫早農は学校対抗8位で7年ぶりに賞状を手にした。
 「健闘」を印象づけた競技が多かったのも、今大会の大きな特徴だ。バスケットボール女子の鎮西学院は初出場で初戦突破。バレーボール男子に初出場した鎮西学院も16強まで勝ち上がり、ハイレベルな長崎で切符を勝ち取った実力を証明した。ソフトテニス女子個人の竹山千尋・坂口美沙姫組(長崎商)は1年生ながら5回戦に進出。敗れた相手が準優勝した点を踏まえると、来年の飛躍が期待される。
 コロナ禍で昨年から各種大会が中止となり、多くの出場チーム、選手は実戦不足を懸念していた。その中で県勢が好成績を収めたのは、都市部に比べて活動の制限が少なかったこともあるが、それ以上に現場の創意工夫、努力が大きかった。
 例えば、なぎなた団体5位の松浦は、板垣勇監督が昨夏から練習のポイントや心構えをまとめた用紙を週1回配布。選手たちはそれぞれ頭の中を整理し、限られた部活の時間を充実させた。重量挙げ男子61キロ級を制した酒井順一郎(諫早農)は「試合がない分、徹底的に基本を見直した」。自らの考え方も柔軟に変えながら、コロナ禍に対応した選手たちが上位に絡んでいった。

■厳しい規定

 感染者が急増する中、全会場で無観客措置が取られた。レスリング、柔道、空手、ボクシングなど、事前の検査を徹底した競技も多かった。陽性者が確認された場合は、そのチームに出場辞退を求める極めて厳しい規定が全競技で設けられた。
 それでも、先陣を切って7月25日に競技が始まったバスケットボール男子は、感染者や濃厚接触者が確認されて3校が出場できなかった。県勢も出場辞退を申し入れた競技が複数あった。
 各会場も感染対策に細心の注意を払っていた。剣道会場の運営スタッフはマスクとフェースシールドをして、会場内の導線にも気を配っていた。だが、競技第2日終了後の夜、出場選手に陽性者が確認された。翌日の第3日は会場内の消毒作業のため、競技開始が約1時間半遅れるなど対応に追われた。
 いつ、どこで感染するか分からない状況であるため、絶対に誰も責めてはならない。だが、これからもまだ、コロナの不安はつきまとう。今回、無事に出場できたチームも、より一層の感染防止策を継続していく必要があるだろう。

■柔軟に対応

 このように、決して「無事に」とは言えない中でも、高校スポーツ最大のイベントは“完走”した。口先で「選手たちには申し訳ないが…」という各種大会の主催者が少なくない中、約1カ月に及んだ長丁場をやり抜いた。そういう意味では今大会は成功したと言えるのではないだろうか。
 インターハイは部活動の集大成の場というだけでなく、多くの高校アスリートにとって人生における大きな区切りの場でもある。今回、運営側は開催か中止かの二択ではなく、多くの選手や保護者らが納得できる妥協点を探り、選手たちが完全燃焼できる場を守り、期間中のアクシデントにも柔軟に対応して大会を成立させた。
 ソフトボール男子で2大会連続優勝を果たした大村工の山口義男監督は、決勝を戦い終えた後、真っ先に運営側への感謝を口にした。
 「インターハイがあるかないかも不安だった。地元の高校生や高体連の方々の支えもあって、いい大会になった。大会を通じて選手が学び、チーム一丸で戦う姿を見ることができた」
 残念ながら、秋の三重国体・障害者スポーツ大会は中止の方向で進んでいる。そんな中、今夏のインターハイはコロナ禍の総合スポーツ大会の在り方を示した大会になった。

県勢8強以上一覧

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