【夏の甲子園】〝校歌問題〟を拭い去りプロ野球選手を輩出する京都国際の着実な強化策

初出場の京都国際はサヨナラ勝ちで4強に進出

【ズームアップ甲子園】第103回全国高校野球選手権大会(甲子園)は26日に準々決勝4試合が行われ、初出場の京都国際(京都)が4強入りを決めた。2015年センバツ覇者・敦賀気比(福井)との終盤の攻防を制して3―2のサヨナラ勝ち。近年、プロ野球選手をコンスタントに輩出する〝新興勢力〟がまた一つ実績を積み重ねた。

今春センバツ初出場時からプレー以外の面で注目を集めることが多かった。もともと在日コリアンらを対象とした民族学校の「京都韓国学園」が前身で、2004年に一般的な私立校となり現在の校名に変更。校歌はその名残から創立以来、韓国語校歌を採用してきた。その校歌の冒頭を和訳すると「東海を 超えてきた 大和の地は…」。韓国名・東海(トンへ)は言わずと知れた日本海のことで、これまで韓国側の主張で何度も「呼称問題」が起きているセンシティブなワード。そのため校歌が流れるたびに議論が先行して、選手の活躍が〝後回し〟になってきた経緯があった。

そんな中で野球部は独自の理念に立ってチーム強化を図ってきた。ある関係者は明かす。

「短期間で躍進した理由は、小牧監督、コーチ陣の指導力にある。彼らは甲子園の先を見据えた指導をしている。一番は一人でも多くプロ野球で通用する選手を輩出すること。そこに共感した野球少年が集まってきて層が厚くなっているんです」

スカウティングの際、学校の歴史なども丁寧に説明。センシティブな問題で話題になることも承知の上で入部してくる。指導者たちの間には「5年後、10年後に『京都国際』と聞いて、世間の人たちが複雑な問題を最初に思い浮かべるのではなく、プロ野球選手をたくさん輩出している高校と認識してくれるチームにしたい」という目標があるという。

近年では2013年ドラフトでソフトバンクに育成指名された曽根(17年支配下登録、現広島)を皮切りに、一昨年は日本ハムにドラフト3位指名された上野、昨年はともに育成ながらソフトバンクに早、オリックスに釣が入団を果たした。現在、チームには2年生ながら来秋ドラフト候補としてプロからすでに注目を集めるエース・森下もいる。プロ輩出の実績に、今回の初出場4強の功績も加わることで、さらなる有力選手の加入も期待される京都国際。〝外野〟の話題が先行する裏で、着実に強化が進んでいる。

© 株式会社東京スポーツ新聞社