カネミ油症は“現在進行形” 母が摂取「知らなかった」 五島、長崎で検診 

次世代被害者ら不安抱え

© 株式会社長崎新聞社

油症検診で採血される未認定の受診者=五島市内

 53年前に発覚したカネミ油症事件で、被害者の健康状態を調べる本年度の長崎県内の油症検診は五島市、長崎市であり、新型コロナウイルス対策として対象を未認定患者に限定し19日に終了。会場では、有害化学物質汚染の食用油を摂取した母親の胎盤や母乳を通じ、油症の主因ダイオキシン類などの影響を受けた可能性がある子ども世代(次世代被害者)らから、埋もれていた証言や複雑な思いが聞かれ、“現在進行形”の問題であることが浮き彫りになった。
 次世代を含む未認定患者には、医療費の補償など支援策が全くない。
 長崎市の40代男性は、西海市の70代の母親と初めて受診。男性は「母がカネミ油を食べていたことは(最近まで)知らなかった」とし、母親は「いらない心配をかけたくなくて黙っていた」と語った。
 男性は子どものころアトピー性皮膚炎で、現在は目立った症状はないが、「異常が出るならきちんとみてもらいたい」と話す。
 母親も未認定だが、20年ほど前から手足などに油分がにじむ症状に悩まされている。炊事では手袋をはめないと茶わんを滑らせて割ってしまうほど。複数の医療機関を受診したが原因は不明。かかりつけ医からは「お手上げ」と言われた。油症事件が発覚した頃は福岡県内に居住。問題の汚染油を天ぷらなどで使っていた。昨秋、油症検診のことを知り、初めて受診。母親は「油症かどうかは分からないが原因を知りたい」とつぶやいた。
 諫早市の40代女性は県内で生まれた。10年近く前に肝臓がんを患った母親が、「(出産当時)周りにも皮膚が黒い赤ちゃんが生まれていた」と話し、油症の新生児異常と似ていることから油症検診を母親と一緒に受けたことも。認定の根拠となるダイオキシン類の血中濃度は基準以下で、母親は未認定のまま他界。女性は「私は幼い頃、母乳を飲んでいる。不安をなくしたいから検診に来ている」と明かした。
 長崎市の30代女性は、市内で汚染油を食べたという60代の母親と一緒に受診。女性は現在、肺炎や精神的な病気、月経異常などを抱え「やっぱり不安がある」と言葉少なに語った。
 五島市の50代女性は次世代ではなく、いわゆる油症1世だが未認定。体のだるさ、背中を走る痛み、目のかすみなどさまざまな症状に悩まされ、薬が手放せないという。奈留島で育ち、「(幼い頃)家庭ではカネミ油しか使っていなかった」。両親も未認定で、医療費は全て自己負担してきた。「ほんの少しでも援助してもらえれば」と早期の認定、救済を求めた。
 国は、次世代被害者の救済に向けた調査を今月開始。認定患者の母親がいる五島市の50代の未認定男性は、調査について「ぜひお願いしたい」と救済に望みをつなぐ。