林横浜市長が退任 女性活躍推進に足跡

職員から贈られた花束を笑顔で受け取る林市長=27日午後、横浜市役所(立石 祐志写す)

 市民サービスの向上を最優先に市政運営のかじ取り役を担った林文子市長。3期12年にわたる林市政は、子育てや女性活躍支援、地域経済の活性化など幅広い分野で実績を上げた。少子高齢化の進展に伴う財源確保に向け、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致にかじを切ったが、市民の賛同が得られずに先の市長選で落選。4期目への挑戦はかなわなかった。

 2009年に就任して真っ先に力を入れたのは保育所の待機児童問題。ピーク時(10年)に1552人で全国最多となった待機児童の「ゼロ」を13年に達成し、全国から注目を浴びた。

 市政史上初の女性市長で、女性活躍推進にも取り組んだ。庁内の課長級以上に占める女性職員の割合は20年に17.9%と就任時から倍増。今年4月には18区のうち女性区長が過去最多6人となるなど、管理職への女性登用を進めてきた。

 全国20政令市で唯一導入していなかった市立中学校給食は、希望者向け配達弁当「ハマ弁」を学校給食法上の給食に位置付け、家庭弁当との選択制で今年4月にスタートさせた。

 地域経済の活性化に向けては、みなとみらい21(MM21)地区への企業誘致を進め、雇用や税収増を図った。20年の市庁舎移転に伴う関内・関外地区のまちづくりや、米軍施設の返還地を生かす郊外部の活性化にも挑んだ。

 文化芸術や観光施策に思い入れが深く、数々のイベントを通して横浜の魅力発信に努めてきた。一方、総事業費約600億円を見込む新たな劇場整備に強い意欲を示し、市民からの反発も招いた。

 将来にわたる財源確保策として19年に表明したIR誘致を巡っては、市長のリコール(解職請求)や誘致の賛否を問う住民投票の実現を目指す大規模な反対運動が起きた。

 自動車販売セールスの現場で学んだ「おもてなしの精神」を大事にしてきた林市長。指定都市市長会や全国クルーズ活性化会議の会長などを務め、全国でも発言力の高い市長だった。

© 株式会社神奈川新聞社