【東京パラリンピック】6位入賞・中西麻耶を変えた言葉「人生楽笑」に込められた思い

笑顔のワケは…(ロイター)

東京パラリンピック・陸上競技(28日、国立競技場)、女子走り幅跳び(T64)で6位入賞を果たした中西麻耶(36=阪急交通社)は、座右の銘「人生楽笑」を胸に大舞台へ挑んだ。

高校時代は地元大分の名門・明豊高でソフトテニスに励んでいたが、2006年9月に仕事中の事故で右脚を失った。当たり前にあった右脚がない――。「みんなは脚があるのになんで私には脚がないんだろう」と途方に暮れ、笑えない時期を過ごした。

そんなある日、たまたま事故時に勤務していた会社の社長へ手紙を書こうとひらめいた。「事故前は普通の出来事を笑えるような感覚をお互いに持っていたが、足を切断してからお互いが本当に笑わなくなってしまったので、今日のこの手紙を持って水に流して、また元のような関係に戻りたいと書きました」。手紙を読んだ社長と中西は、お互いに照れながらくすくす笑っていたという。

この出来事を機に、中西の気持ちは大きく変化した。「全然面白いこともないのに笑えるって本当にすごい大事なことだって気がついた。人生は楽しく笑った方がいいな」。自然と表情に笑顔が戻った。

前回のリオ大会で4位に終わった悔しさをバネに戦った今大会。決して満足のいく結果ではなかったが「ベストを尽くした5年間だった」と前を向いた。その表情は誰よりも清々しかった。

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