7点差追いつける西武・山賊打線 辻監督は先発投手に苦言「痛いどころじゃないよ」

西武・辻発彦監督【写真:荒川祐史】

試行錯誤の今井に「リラックスの仕方を間違えている」

■西武 8ー8 日本ハム(28日・メットライフ)

リーグ5位低迷中の西武は28日、本拠地・メットライフドームで行われた日本ハム戦で、5回表終了時点の0-7から猛追。結局8-8で引き分けた。劇的な追い上げを、上位進出のきっかけにしない手はない。

本拠地に足を運んだ9019人のファンが何度も、思わず腰を浮かせた。7点を追う5回、まずは源田壮亮内野手が左腕・加藤から2号2ランを放ち、反撃の狼煙を上げる。1死後、栗山巧外野手の通算1995本目のヒットとなる中前打を皮切りに一、二塁とし、外崎修汰内野手のセンター左を破る2点二塁打で、この回4点を挙げた。

7回には日本ハムに1点を追加され4点差に広がったが、その裏、3番手の左腕・堀を攻め、外崎が左翼席へ4号2ラン。さらに愛斗外野手の右越え適時二塁打、源田の右前適時打と続き、一気に追いついた。8回2死一、二塁の勝ち越し機、9回2死三塁のサヨナラ機はいかせなかったが、最後まで攻め続けた。

辻発彦監督は「7点差をつけられ、普通なら淡泊な攻撃になりがちなところだが、しっかりつないで、よく追いついてくれた」と打線を称えた。森友哉捕手と山川穂高内野手が「特例2001」で登録を抹消されている。打線のパワーダウンは否めないが、そんな状況も跳ね返し、山賊打線復活を思わせる猛攻を見せた。

栗山はスライディングキャッチ、愛斗はダイビングキャッチでも援護

悔まれるのは先発の今井達也投手の乱調。今季は6勝、試合前の時点でリーグ4位の防御率2.80をマークし成長のあとを見せているが、好不調の波が大きい。この日は、いきなり初回に3安打2四球と1犠飛で4点を失った。3回には王柏融の7号ソロと石井の適時三塁打を献上。5回にも高濱の7号ソロを浴び、5回7安打4四球7失点といい所がなかった。辻監督は「痛いどころではないよ。だいたいウチの先発投手はみんな立ち上がりが甘い。もうちょっとしっかり、立ち上がりから全力でいけるように調整してくれないと」と嘆くことしきりだ。

制球を乱すことが多い今井は、無駄な力みを除いた“リラックス投法”を確立しようと模索しているところだ。それでも、指揮官は「リラックスして投げているのは分かるけど、リラックスの仕方を間違えている」と一刀両断。「投手コーチとしっかり話をしてほしい」と苦言を呈した。

そんな序盤のつらい守備の中でも、1回無死二、三塁で高濱が放った左前の飛球を栗山がスライディングキャッチ(犠飛)。2回先頭の石川が右中間へ放った痛烈な当たりも、右翼の愛斗がスーパーダイビングで好捕した。

「だからね、ああいう展開になっても、打たせればバックが助けてくれるわけだから。しっかり感謝して、先発投手は1週間の調整に生かして、それだけの内容を見せてくれないと。それだけの責任がある。野手が毎日一生懸命戦っていることを感じて投げてほしい」。辻監督の投手陣への注文は続いた。

2018、19年にリーグ連覇した時も「打高投低」の傾向が強かった西武だが、今井、高橋光成投手、渡邉勇太朗投手ら若い先発投手は確実に育っている。なんとかもう1枚殻を破ってほしいところだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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