ウスバキトンボ

 先日のこの欄で、車を走らせていたらトンボが前を横切ったことを書いた。お盆を過ぎた頃から、たまに目にしている、と。そうしたら、はがきを頂いた。「それは昆虫学で言うウスバキトンボです」。「薄い羽の黄色いトンボ」の意味らしい▲教えてくださったのは長崎市の池崎善博さん(82)。元高校教師で、日本トンボ学会の会員であり、もう半世紀ほどトンボについて調べている。「長崎では精霊(しょうろう)トンボと言って、お盆になると、お精霊さまがこのトンボに乗って里帰りするといわれています」▲熱帯系のトンボで、3月末あたりに沖縄付近から飛来してくる。水田や池で産卵し、お盆の頃に大発生するという▲赤トンボとよく一緒にされるが、一般的に赤トンボとは、胴体が赤いアキアカネのことで、色も形も違っている。九州ではあまり見られない。黄色いウスバキトンボは羽が薄く、軽くて、一定の高さで浮く「ホバリング」もお手の物らしい▲もう一つ違うのは、アキアカネは夏を涼しい高地で過ごし、秋に麓で産卵して、卵の状態で越冬する。熱帯系のウスバキトンボは寒い冬を越せず、命を終えるという▲近ごろは屋外にいると、それとはなしにトンボがいないか見渡すようになった。晩夏の風物ともいえる姿に、今年はあと何回会えるだろうか。(徹)

© 株式会社長崎新聞社