気ぜわしい8月

 二つの原爆の日が巡ってきて、やがて終戦の日を迎える。今の時期は、お盆の帰省で人が動きだす一方で、戦争に思いを巡らすことの多い頃でもある▲今年はいくらか様子が違う。「広島原爆の日」の6日は五輪のさなかで、日本勢は終盤になっても続々とメダルを手にした。閉会式の翌日は「長崎原爆の日」。その翌日の10日から、新型コロナの感染拡大で、県内全域の飲食店などに営業時間の短縮が求められている▲五輪の躍動を目にした。追悼と祈りの日が巡ってきた。その直後、またも辛抱の日々に入った。この1週間に限っても、心でさまざまな思いが行き来する毎日を私たちは送っている▲長崎大の予測によれば、市民同士が接触する機会を大きく減らしたとしても、お盆の入りには大型連休ごろの「第4波」を上回る感染者数になるとみられる。1週間後、2週間後はどうなるだろう。緊迫した局面にある▲帰省客でにぎわうはずだった飲食店。帰省をやめた人たち。県内の宿泊割引キャンペーンが「いったん停止」になり、予約が消えた旅館、ホテル。辛抱の先にコロナ禍の出口が見えていればいい。いまだに見えず、歯がみが続く▲思いがさまざまに交差する日々を、私たちはこの先もしばらく過ごすのだろう。こんなに気ぜわしい8月は、まずない。(徹)

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