佐藤輝復調のポイントは? 3位転落の阪神、再浮上の条件と試される首脳陣の手腕

阪神・大山悠輔(左)と佐藤輝明【写真:荒川祐史】

「そろって好調だった野手陣に、今度は同時に打撃不振の波が…」

29日の広島戦に敗れ、4月3日以来、148日ぶりに首位から陥落した阪神。2005年以来、16年ぶりのリーグ優勝に向けて、巨人、ヤクルトとの三つ巴の優勝争いはこれからも続いていく。現役時代にヤクルト、阪神など4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家の野口寿浩氏が虎再浮上の条件を指摘する。

「開幕直後はそろって好調だった野手陣に、今度は同時に打撃不振の波が押し寄せている。いま比較的頑張れているのは、1番の近本(光司外野手)と2番の中野(拓夢内野手)だけ。彼らが出塁しても、返す人がいません」。野口氏は現状をそう分析する。

特に和製大砲2人の不振が深刻だ。4番を務めてきた大山悠輔内野手は今季打率.238。黄金ルーキーの佐藤輝明内野手も自己ワーストの25打席連続無安打(30日現在)のトンネルから抜け出せない。28日の広島戦では大山、翌29日の同カードでは佐藤輝がスタメンを外れた。

「新人の佐藤輝にとってペントレースの長丁場は初体験。疲労で下半身の粘りがなくなり、バットの振りが鈍っているのは間違いない」と指摘。「プロの世界を生き抜くには、体が疲れている時でも鋭いスイングができる技術が必要です。一番近くで継続して見ている3人の打撃系のコーチ(井上一樹ヘッドコーチ、北川博敏打撃コーチ、新井良太打撃コーチ)やスコアラーから有効なアドバイスをもらえればと思います」と復調のポイントを挙げた。

「外国人枠をどうやり繰りしていくか、首脳陣の腕の見せ所」

さらに野口氏は「こういう時こそ起爆剤が欲しい。2軍にそういう人材がいるかというと……実は井上(広大外野手)の骨折は痛いんですよ」と言う。高卒2年目の井上は、ウエスタン・リーグトップの50打点、同2位の9本塁打(30日現在)をマークし成長著しい。ペナントレース中断中のエキシビションマッチでは1軍に呼ばれていたが、20日のウエスタン・リーグのソフトバンク戦で右足の脛骨を骨折。痛恨の離脱となった。

16年ぶりの優勝には「大山と佐藤輝の復調が不可欠」(野口氏)だが、2人に火が付くまで、外国人選手のサポートが必要になる。30日には中継ぎで活躍していたラウル・アルカンタラ投手を抹消。しばらくはジェフリー・マルテ内野手、ジェリー・サンズ外野手、メル・ロハス・ジュニア外野手の外国人野手3人体制を敷くことになりそうだ。

一方の投手陣も、エース格の西勇輝投手が6月25日のDeNA戦以降6連敗となっているのをはじめ、軒並み調子を落としている。「その中にあって(ジョー・)ガンケルは先発で試合をつくれている。外国人枠をどうやり繰りしていくか、首脳陣の腕の見せ所だと思います」と野口氏は強調した。外国人枠は出場選手登録が5人、ベンチ入りが4人まで。基本的に守護神のロベルト・スアレス投手は外せず、ガンケルが先発する日には、外国人野手3人のうち1人を外さなければならなくなる。

開幕直後から快進撃で虎党ファンを歓喜させたが、長いペナントレースを独走で乗り切れるほど甘くなかった。投打とも不振に陥り首位の座から転落した今こそ、猛虎の真価を問われる踏ん張りどころだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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