<社説>22年度沖縄関係予算 「一括計上」でいいのか

 内閣府は2022年度の沖縄関係予算概算要求を2998億円と決定した。本予算は10年ぶりに3千億円台を割り込む見込みだが、問われるのは総額ではなく中身である。 県の自由度が高い沖縄振興一括交付金は過去最低額となり、国が直接市町村に予算を投下する方式は維持された。県の裁量を制限するやり方は地方分権の精神をゆがめる。一方、社会資本整備を大幅に減額し、子どもの貧困や教育・人材育成が重視された点は評価できる。

 来年は沖縄の施政権返還から50年を迎える。沖縄関係予算を国に委ねる一括計上方式を再考する時期にきている。県は政策立案能力を磨き、他県と同様に自力で予算獲得する力を付けるべきだ。県民論議を深めてほしい。

 一括交付金は、地方自治体の裁量で使途を決められる地方交付金として、12年に沖縄振興特別措置法で定められた。国が使途を決める「ひも付き」補助金に代わる交付金で、県や各市町村の実情に合った事業に予算を振り向け、沖縄の自立度を高める狙いがある。

 しかし、22年度の沖縄振興一括交付金は、21年度当初予算と同額の981億円となった。ピーク時に比べて半減している。

 これに対し、国が県を介さず市町村に直接投下する沖縄振興特定事業推進費は、5億円減額したものの80億円計上した。「一括交付金(ソフト交付金)を補完する」という位置付けだが、それなら最初から一括交付金として計上すれば済む話だ。

 国の裁量を認めて県の裁量幅を狭めることで、市町村に対する国の影響力が強まる。県と市町村を分断する可能性もはらむ。

 一括交付金は「政策課題に沖縄が主体的に対応するための財源」である。しかし、一括計上方式を採用している限り、国のさじ加減で要求額が増減してしまう。

 22年度の概算要求は道路、港湾など社会資本整備の関連費用を大幅に減額し、モノからヒトへの流れを加速させた。「沖縄子供の貧困緊急対策事業」を18億5千万円に増額した。予算規模は過去最大。沖縄の将来を担う子どもたちが直面する課題に、しっかり取り組んでほしい。

 IT人材育成などに「沖縄産業競争力強化・人材育成推進事業」18億4千万円を盛り込んだ。沖縄のものづくり企業の中核となる人材育成は急務である。予算配分の転換は歓迎するが額は物足りない。さらに上積みが必要だろう。

 このほか、全体予算が減額される中で必要性に疑義のある事業が継続している。「沖縄・地域安全パトロール隊」(通称・青パト事業)だ。実施後5年間の実績で米軍関係者に関する通報は0.6%しかない。これまでに35億円超を投じながら効果が見えない。7億3千万円を計上した根拠を明確にしてもらいたい。

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