【東京パラリンピック】50歳で金メダル・杉浦佳子 鋼の精神力「最年長記録はまた更新できる」

最年長の金メダリストとなった杉浦佳子(ロイター)

新たな歴史が刻まれた。自転車競技(31日、富士スピードウェイ)の女子個人ロードタイムトライアル(C1~3)、初出場の杉浦佳子(50=楽天ソシオビジネス)が25分55秒76で優勝。男女を通じて日本勢最年長金メダリストとなった。

数々の試練に打ち勝ってきた。2016年4月、自転車のロードレース中に転倒し、頭蓋骨などを粉砕骨折。高次脳機能障がいと右半身にまひが残った。17年から日本パラサイクリング連盟の勧めで競技を本格的にスタート。当初は本人から知らされていなかった母・良子さんは「成績が出るようになってから『実はやってるよ』と報告があった」と笑う。当然、転倒のリスクもあるが「自分で考えて自分でやろうとしていることだから」と背中を押した。

昨年夏には、練習中に体調を崩し、引退を考えたこともある。5月には左股関節唇の損傷が判明。思うように練習を積めない時期もあったが「神が与えた試練」と前を向いた。杉浦が所属するVC福岡の佐藤信哉監督も「いろんな難局があってパラに挑戦すること自体が難しいと思うときもあったが(杉浦は)『そういう困難があったから、それを乗り越えてだんだん強くなった』と話していた」と舌を巻く。

この日のレースに挑むのあたり、約2年間にわたって会場のコースを徹底分析。佐藤監督によると、パワーで外国人選手に劣る分、テクニカルな難コースを無駄なく走るテクニックに磨きをかけたという。

地道な努力が実を結んだ金メダル。良子さんは「よく頑張ったなと思う。今までの行程を思うと、何とも言えない気分。ここまで立ち上がると思っていなかったので胸が熱くなりますね」と感慨深げに語ったが、杉浦はさらなる高みを見据えている。「最年少記録は更新できないけど、最年長記録はまた更新できる」。次なる戦いは9月3日のロードレース。最後の力を振り絞る覚悟はできている。

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