米財務省が韓国半導体企業の買収を拒否 中国への売却が「安保上のリスク」

米国財務省が、韓国の半導体メーカーである「マグナチップ半導体」の中国系ファンドよる買収について、安全保障上の理由から拒否するとの見通しが出ている。

31日ロイターなど外信によると、米財務省は27日、マグナチップ半導体に送った書簡を通じて中国系プライベートファンド・ワイズロードキャピタルによる買収について「米国の国家安全保障上のリスクになり得る」という立場を伝えたという。事実上の拒否権の発動となる。最終的にはバイデン米大統領の決定が残っているが、バイデン大統領が財務省の決定を覆す可能性は小さいとみられる。従って今回の買収は失敗に終わる可能性が大きくなったと韓国各紙も報じている。

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マグナチップ半導体は2004年に当時ハイニックス半導体(現SKハイニックス)システム事業部が分社した会社だ。生産設備が韓国にあり、従業員もほとんど韓国人なので韓国企業として認識されているが、米国シティグループのベンチャーキャピタルが買収し、2011年に米国ニューヨーク取引所に上場した。主力生産製品は、今年のOLED(有機発光ダイオード)ディスプレイドライバ駆動チップ(DDIC)である。

マグナチップ半導体は3月にワイズロード・キャピタルによる自社買収計画を発表した。買収価格は約14億ドルだった。マグナチップ半導体は、「国内の施設と事業はそのまま維持される」と明らかにしたが、韓国でも反対の声が強く、大統領府の請願サイトにも買収反対の投稿がなされ、多数の賛同が集まった。

マグナチップ半導体の買収は、利害関係国である米国と韓国、中国のいずれの国でも承認される必要がある。中国では今年6月に承認を受け、韓国では産業省(産業通商資源部)の審査が進行中である。

米国は中国との覇権競争において半導体技術の防衛を強めていることから、今回の財務省の判断もなされたとみられる。。

マグナチップ半導体は、米国の決定について「次のステップについて悩んでいる」とし「どの方向にも確定されたことはない」と説明したとロイターは伝えた。

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