エースを変えた転機とは? 東京パラリンピック競泳男子100メートル平泳ぎ(SB11)決勝(1日、東京アクアティクスセンター)で木村敬一(30=東京ガス)が1分11秒78で銀メダル。自国開催の大一番で3大会連続のメダルを手にした。
どん底からはい上がった。「自信はそこそこあった」と臨んだ2016年リオ大会は銀2個、銅2個のメダルを手にした一方で、目標の金メダルには届かず。「なんか『う~ん』って、くたびれた感じ」と一時は引退も考えた。しかし、東京大会を控えていたことから「風向き的に〝ここでやめます〟って言う方が勇気のいることだった。本当にやめる理由が見つからなかった」。現役を続けつつも、練習に身が入らない日々が続いた。
「どこかでちゃんとやらなきゃ」と自問自答を繰り返す中、ふとひらめいた。「米国に行っちゃえばいいかな」。当時はほとんど英語を話せなかったが「あまり怖くなかった。むしろ楽しみだったし、もともと不便だと思っているので」と18年から拠点を米国に移した。「うまくいかないことだらけでも『できることは何だろう?』と考えていた」。日本では細かい部分までコーチが指導してくれるが、米国は良くも悪くも放任主義。自ら考え実行する力が身についた。
新型コロナウイルス禍の影響で20年3月に帰国を余儀なくされたが、大会関係者が「彼は彼なりに水泳の道を極め続けている」と舌を巻くほどの成長ぶり。その成果をメダルにつなげ「すごくホッとしている。良くて銅メダルだと思っていたので、この種目で銀メダルを取れて満足している」と振り返った。
もちろん、ここで立ち止まるつもりはない。3日に控える本命の100メートルバタフライ(S11)に向けて「目標はまだ達成できていない。しっかりと切り替えていきたい」ときっぱり。競泳最終日に悲願の金メダル取りを目指す。