長崎県内 コロナ自宅療養増加 「サポート医」の電話診療 長崎市で運用開始

 今夏の新型コロナウイルスの第5波は長崎県内でも自宅療養者が急増した。県は、開業医ら「サポート医」が電話で診療する支援事業を県医師会に委託。感染者が最も多い長崎市では既に運用が始まっている。
 県によると、第5波は過去4回の波を大幅に上回る規模と速さで感染が拡大し、軽症者らを受け入れる同市などの宿泊療養施設は逼迫(ひっぱく)。先月22日時点の県内の自宅療養者は最多の388人に上り、第4波のピークだった134人の3倍近くとなった。県は、県内の開業医ら98人をサポート医として確保。当番制で24時間対応する。
 同市では同23日に運用をスタートした。自宅療養者には血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターを貸し出し、保健所の保健師らが最低でも午前と午後に1回ずつ電話で健康状態を確認。気になる症状があれば、保健所がサポート医に連絡している。サポート医は療養者を電話診療し、薬も処方。容体急変時には感染症指定医療機関などに救急搬送する。
 同市によると、同30日までの1週間で14人がサポート医を受診し、うち1人が入院した。保健師は医師につなげることで安心感を感じているようで、療養者からも「不安だったが落ち着いた」との声が聞かれるという。だが第5波の感染者は若年層が目立ち、行動範囲も広いため、濃厚接触者が多い。市の担当者は「自宅療養者だけでなく濃厚接触者の健康観察もしており、保健師らの負担は増している」と説明する。
 自宅療養で気を付けなければならないのが家庭内感染。県は▽療養者との接触は最小限とし、世話は特定の人が担当▽同居者全員がマスク着用とこまめな手洗い▽ドアノブなどはアルコール消毒▽トイレ、風呂などは十分な清掃と換気-などを呼び掛けている。
 ただ県外では自宅療養者の容体が急変し死亡するケースが相次いでいる。県内の1人暮らしの自営業男性(32)は先月中旬の陽性判明後1週間、自宅療養をしていたが、保健所から連絡がなかったという。発熱などの症状が落ち着き、いつから外出してよいかを電話で問い合わせると、毎日の健康観察の確認を失念していたと釈明された。男性は「療養者が多くて手が回っていないのかな」と話す。
 県内の医療関係者には、連絡が取れずに亡くなるケースを防ぐ意味でも、広い空間を確保した「野戦病院」のような臨時施設を求める声もある。
 長崎大学病院感染制御教育センター長の泉川公一教授は先月20日の会見で「(野戦病院の)スペースがあっても、医療従事者をそこに出すだけの余裕がない」と述べた。中村法道知事も同31日の会見で、プライバシー確保などの観点から宿泊療養施設の拡充に力を入れる方針を示した。

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