うつは甘え? うつ病の原因は「心の問題」ではなく、ウイルスにあった! その研究結果について東京慈恵会医科大学教授・近藤一博の著作がわかりやすく解説!

東京慈恵会医科大学教授、近藤一博の著作『うつ病の原因はウイルスだった! 心の病の最新知見Q&A』が扶桑社より刊行された。 新型コロナウイルスの影響もあって、うつ病患者の数は世界中で2~3倍に増加していると言われている。うつ病は、2030年には世界的に最も多くの“命の年数”が失われる疾患、すなわち健康に過ごせる期間が最も失われる病気となると予測されている。 これだけ重要な疾患にもかかわらず、うつ病がどうして起こるかはまったくと言っていいほどわかっておらず、治療も対症療法に留まっているのが現状。科学的な解明が遅れていると生まれてくるのが、偏見と迷信だ。 うつ病で苦しんでいる人は、「うつ病は甘えだ」とか「うつ病は病気じゃないから医者に行く必要はない」といった周囲の心ない言葉を経験したことがあるはず。

しかし結論から言うと、うつ病は「心の弱さ」とは何の関係もない。 うつ病の原因にはさまざまな意見があるが、「心が弱いからうつ病になる」というのはただの迷信。うつ病は、病が外からは目に見えないので、どうしても誤解されやすい。 「本人の心の問題」 「気の持ちよう」 「やる気が足りない」 「努力すればなんとかなる」 世の中は進んだようでいて、こういった暴論が患者に浴びせられることは、いまだに少なくない。 ただでさえ有効な治療法が確立されていないのに、こんなことを言っていたのでは、うつ病の問題は解決するはずもない。

うつ病って、心の病気? 体の病気?

かつては、「うつ病はセロトニンが不足することによって起きる」という「セロトニン原因説」が学会の常識とされていた。これに基づいて開発された抗うつ薬が現在多くのうつ病患者に処方されている。

しかし、抗うつ薬で治るうつ病患者は約半数。つまり、セロトニンを補っても、半分の患者は治らない。 それではどうすればよいのか? 根本的にはうつ病の原因を明らかにして、うつ病の原因を直接攻撃できる特効薬や正しい予防法を開発することだ。

これに関して東京慈恵会医科大学の近藤一博教授が率いるグループがヒトの身体に潜伏している「ヒトヘルペスウイルス6 SITH-1」というタンパク質がうつ病の原因になることを発見。映画『スターウォーズ』に登場するジェダイの騎士の宿敵、「シスの暗黒卿」から名付けたという。

SITH‒1タンパク質があると12倍うつになりやすい!

実際に健康な人とうつ病患者のSITH‒1抗体の量を調査したところ、SITH‒1抗体値が高い人はSITH‒1抗体値が低い人に比べて、12.2倍うつ病になりやすいということがわかった。 さらに、うつ病になる患者のうち79.8%、実に5人中4人がSITH‒1の影響を受けていることもわかった。

近藤教授グループのこれらの発見は2020年6月、「うつ病の原因となるウイルスの遺伝子が発見された」というニュースとして、さまざまなメディアで取り上げられ、大きな話題になった。 近藤教授がこの度上梓した『うつ病の原因はウイルスだった! 心の病の最新知見Q&A』では、これらの研究結果についてマンガを交えながらQ&A形式でわかりやすく解説している。 うつ病の原因についてはさまざまな意見がありますが、「心が弱いからうつ病になる」というのはただの迷信。 本書では疲労やストレスが、ウイルスによって引き起こされるうつ病と深い関係にあることや、そのメカニズムをわかりやすく解説している。 また疲労やストレスを軽減するための具体的な方法、疲労を回復する因子を増やす作用のある成分やそれらを含む食品も記載されており、日常生活の中にうつ病予防策を組み込むにはうってつけの一冊となっている。 これによってうつ病を正しく理解する人が増えれば、うつ病に対する偏見と迷信を少しは減らすことができるのではないだろうか。

【著者プロフィール】

近藤一博(こんどう・かずひろ) 1958年三重県生まれ。愛知県と大阪府で育つ。大阪大学医学部卒業後、大阪大学附属病院研修医、大阪大学微生物病研究所助手、スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー、大阪大学医学部微生物学講座准教授を経て、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座教授。同・疲労医科学研究センター センター長を兼任。日本ウイルス学会評議員、日本疲労学会理事。著書に『疲労ちゃんとストレスさん』『うつ病は心の弱さが原因ではない』(河出書房新社)がある。

© 有限会社ルーフトップ