【札幌2歳S】「もうあの馬とは一緒に走らせたくない」 ジャングルポケット陣営が明かした最大のライバル

結果だけ見ればジャングルポケットの完勝だった

【松浪大樹のあの日、あの時、あのレース=2000年札幌2歳S】

ライバルと呼べる馬がいたほうが競馬は盛り上がりますよね。

1970年代後半の「TTG(トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラス)」はさすがに過去映像の世界ですけど、オグリキャップだって、最初はタマモクロス、それ以降はスーパークリーク、イナリワンなどの強いライバルがいたからこそ、いくつものドラマを生んだはずですし、一度しか対戦していないにもかかわらず、「ウマ娘」では生涯のライバルのように描かれていたメジロマックイーンとトウカイテイオーの関係性も、ライバル対決を好む人の〝性(さが)〟みたいなものが出ているのではないかと。

同世代で性別も同じウオッカとダイワスカーレット。彼女たちはわかりやすいライバルであり、当時はウオッカ派とダイワスカーレット派に二分されてましたよね。当時の僕は断然のウオッカ派。ですが、その2頭が引退し、彼女たちの話がニュースにならない時代となった現在だからこそ、関係者から「あのときはこうだった」なんて話を聞くことも。いまでは〝甲乙付け難い〟という玉虫色の結論にしているんですが、そう考えるに至ったエピソードも今後の当欄で披露することがあるかもしれません(笑)。

さて、本題。今週の主役に指名したのは2000年の札幌3歳S(※当時)を勝ったジャングルポケット。この馬のライバルを聞かれたとき、果たしてどの馬がふさわしいのか? 悩むところですよね。2戦2敗でもアグネスタキオンにすべきなのか? それともダービー2着のダンツフレームか? ジャパンCで競り落としたテイエムオペラオーはないですよね。彼のライバルはナリタトップロード、もしくはメイショウドトウの二択ですし。

あくまで僕の個人的なイメージで言えば、ジャングルポケットのライバルはタガノテイオー。彼しかいないと思っています。新馬戦ではクビ差の2着に退け、この札幌3歳Sでは1馬身半の差をつけて完勝。2戦2勝の戦績だけを見れば、ジャングルポケットのほうが圧倒的に強いというイメージかもしれません。

しかしながら、札幌3歳Sまでの日程を見れば、新馬戦から中2週のゆとりあるローテーションで、体重も10キロ増のジャングルポケットに対し、タガノテイオーは新馬→未勝利が中1週。そこからの連闘策で馬体重は12キロ減だったんですよね。デビュー時点で430キロ台の小柄な馬。これは相当こたえたと思います。それなのに、この状態で年末の阪神3歳牝馬Sを勝ち、翌年には牝馬二冠馬(桜花賞、秋華賞)になるテイエムオーシャン(3着)を競り落としているんです。

もしかしたら、このレースで最も強い競馬をしたのはタガノテイオー? さすがにそれはないかもしれませんが、このレースのあとだったか、それとも東スポ杯2歳Sの前後だったかは忘れてしまいましたが、タガノテイオーを管理していた松田博資調教師から「本音かどうかはわからんけど、渡辺さん(ジャングルポケットの調教師である渡辺栄調教師)に〝タガノテイオーとは一緒に走らせたくない。今度は負けてしまうだろうから〟と言ってもらったんだ。嬉しかったなあ」という話を聞いたことがあります。勝者にそれだけのインパクトを与えたレースだったということですよね。

そんな小さいエピソードがあるからですね。仮にタガノテイオーが無事で、アグネスタキオンも故障もしないで、そこにクロフネやダンツフレームが加わっていたのなら、2001年のダービーはすごかっただろうな…と現在でも思ってしまうんです。ちなみにこの札幌3歳Sは結果だけでなく、レース内容も迫力満点ですので、未視聴の方はぜひご確認を!

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