【東京パラリンピック】「今できることをやる」競泳・悲願の金 木村敬一を支えた言葉とは

悲願の金メダルに涙する木村敬一(ロイター)

日本のエースを支えた言葉とは――。東京パラリンピック・競泳競技(3日、東京アクアティクスセンター)、男子100メートルバタフライ(S11)決勝が行われ、木村敬一(30=東京ガス)が1分2秒57で優勝。かねて「金メダルを取る」と公言してきたスイマーが、四度目の大舞台でついに頂点の座を勝ち取った。

自らの足で道を切り開いてきた。先天性疾患により2歳で視力を失った木村は、小学4年から水泳を始めた。視覚情報が一切ない状態でも、小学校卒業時には4泳法をマスター。「僕は生まれつきの障がいなので、ぶつかるのも当たり前の中で育っているし、見て覚えるってこと自体を知らない。単純に比べられるわけではないが、自分は何かを失ったっていうか、欠けているとは思わない。僕の中で100%のことをやっている」。新型コロナウイルス禍で大会が史上初の1年延期になった際も「やっぱりな」と気持ちを切り替え、スピード持久力の強化などに努めてきた。

レース後には「この日は来ないんじゃないかなと思ったこともあった」と本音をこぼしたが、不安を抱えながらも走り続けた木村には、大切にしている言葉がある。

「置かれた場所で咲きなさい」

2016年に旭日中綬章を受賞した故・渡辺和子さんの言葉で、自身が発行した本のタイトルにもなっている。木村は「今できることをやりなさいって話。それを考えて、そういう風に生きていくのが楽な気がしている」。今の自分ができることを考え、行動に移してきた。

今までの成果が実を結んだ金メダル。「泳ぎとしては全然いいものじゃなかったが、それでも何でもいいなってくらいうれしい」。目には大粒の涙が浮かんでいた。

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