優勝争いが混戦になるほど「巨人有利」になる? 専門家が注目する“原監督の十八番”

巨人・原辰徳監督【写真:荒川祐史】

なぜ阪神は0.5ゲーム差の巨人に勝っても追い越せなかったのか?

■阪神 7ー3 巨人(3日・甲子園)

セ・リーグ首位の巨人は3日、敵地の甲子園球場で、0.5ゲーム差の2位の阪神に3-7で逆転負けを喫した。順位交代かと思いきや、“数字のマジック”で首位の座のまま。引き分けの数(巨人13、阪神3)に大差があることが異例の事態を招いた要因だが、今後も巨人に有利に働くと専門家は見ている。

3日時点で、首位・巨人は52勝38勝13分(勝率.578)、2位・阪神は57勝42敗3分(勝率.576)。勝利数も貯金も阪神の方が多いが、順位はあくまで勝率で決まるところがミソ。今季セ6球団で、引き分け数が1桁なのは阪神だけ。こうなると阪神は他球団に比べ、勝ってもなかなか勝率が上がらない印象になる。

現役時代にヤクルト、阪神など4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「巨人の方に余裕を感じますね。こういうことが続くと、阪神には『なぜ勝っても勝っても追いつけないのか』と萎える選手が出てくる恐れがある」と見る。

一方の巨人には、勝てない試合も引き分けに持ち込む“負けない力”がある。8月31日から今月2日まで行われた3位・ヤクルトとの3連戦も、2勝1分で負けなし。2日の3戦目は、1-1の同点で迎えた9回に守護神・ビエイラが33試合ぶりの失点を喫し勝ち越されたが、その裏に打線がしぶとく追いつく粘りを見せ引き分けた。

負けない試合を作る打線の粘りと“マシンガン継投”

また、試合の中で失点を最小限に抑える効果を発揮しているのが、原辰徳監督が得意とする小刻みな“マシンガン継投”。3日の阪神戦では、珍しく裏目に出た。2点リードで迎えた7回、先発の戸郷が大山に同点2点適時二塁打を許すと、なおも続いた無死二、三塁のピンチで変則左腕の高梨を投入。しかし、代打サンズに対し、ボールが2つ先行したところで申告敬遠し、右腕の鍵谷と交代した。結局、鍵谷も中野に勝ち越し3点適時三塁打を浴びた。

それでも、継投で勝ってきた経験値は、シーズン最終盤で生きそうだ。野口氏は「今季はコロナ禍の特別ルールで9回打ち切り。延長戦を考えなくていいので、存分にリリーフ投手を継ぎこめる。原監督は今季限りのルールを上手に利用していると思います」と指摘する。優勝争いが混戦になればなるほど、原巨人の“引き分ける力”がじわじわと効いてくる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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