“特等席”で西武・栗山2000安打を見守った楽天・炭谷「兄であり、お父さんのような人」

大記録を達成した西武・栗山(右)に花束を渡した楽天・炭谷

西武生え抜き初の2000安打を達成した栗山巧外野手(38)に弟分である楽天・炭谷銀仁朗捕手(34)が祝福メッセージを送った。

栗山の2000安打の瞬間をスタメンマスクという〝特等席〟から見つめた炭谷。試合後「(西武での)1年目からずっと栗山さんの背中を見て育って、正直、FAで巨人に行った時に、唯一の心残りが栗山さんの2000安打を見られないなという思いがありました。でも、こういう形で真剣勝負の中で結果的に打たれたけれど、それを生で見ることができて、本当にいろいろな思いが込み上げてくる」と正直な思いをコメントした。

2006年の西武入団から18年オフの巨人FA移籍まで13年間、栗山と苦楽を共にした炭谷は「去年、巨人で(坂本)勇人の2000本を生で見て感動しました。日本代表での交流もあり、プライベートでも付き合いのあった後輩の偉業を見届けて『コイツ、すごいな』と心から思えた。一方で栗山さんの場合は勇人とは全然違う感覚。自分がプロの世界に飛び込んだその日からお世話になった人の偉業達成なので、楽天の選手という立場を超えて、個人的に込み上げて来るものがある」と言葉を選んだ。

両者の関係は炭谷が西武のドラフト1位として旧若獅子寮に入寮した2006年1月8日にさかのぼる。

炭谷は「入寮した当日の夕方に寮生の先輩方にひと通りあいさつしました。そして、深夜0時頃でしたかね。当時の室内練習場の前にあった自動販売機に飲み物を買いに行ったら、栗山さんが一人で黙々とマシンを打ち込んでいた。事前に担当スカウトの鈴木テル(照雄)さんに『栗山についていけば間違いないから』と言われていたんですが、その姿を見てショックを受けました。と同時に、スカウトの言葉が自然と自分の中に入ってきました」と初対面の日の晩の出来事に言及した。

その姿だけで炭谷にプロの世界で生きて行くことの孤独と厳しさを教えた栗山。以来、背中を追うように西武の中心選手へと成長して行った炭谷だが、いつしか栗山は「何かあったら一番最初に相談に行く」身内のような存在にもなっていた。

「それはもう(西武での)3度のFAの時もそうだし、あらゆる相談に乗ってもらいました。ボクは今、選手会の会長をやらせてもらっていますけど、時々、栗山さんに電話をさせてもらっています。ボクにとってはお兄ちゃん的な存在なんですけど、中身はお父さんのような感じ。信頼して何でも相談できる人ですね。2000本のうちボクも1600本ぐらいを(西武側の)ベンチで見ていますから、去年の(巨人・坂本)勇人とはまた違う感情が湧いてきてしまう。栗山さん、本当におめでとうございます」

炭谷の祝辞には、2人だけが分かち合ってきた時間の濃さと思いが入り交じっていた。

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