【シモの話】梅毒患者が2011年ごろから急増のワケとは…

違和感を感じたら…

【泌尿器科医・高橋亮 シモの話】今週からは数回に分けて梅毒についてお話ししたいと思います。

梅毒は厳密には皮膚科に分類される病気です。医学部時代の教科書にも皮膚科の教科書に出てきました。泌尿器科の病気ではないのです(よって泌尿器科医の小生が偉そうにコラムで話すにはややはばかられますが…)。

以前はほとんど見られない病気であったため、皮膚科の医師であっても梅毒の患者さんを実際に診察した経験のある先生はあまりいませんでした。私も今まで出会った梅毒に感染歴のある患者さんはほとんど高齢の方であり、「いや~、むかし岡場所で遊んじゃってよ~」みたいな好々爺の方にしか会ったことがありませんでした。私たちにとっては、梅毒は過去の病気であり、もう日本にはほとんど患者さんはいないものだと思っていたのです。実際、梅毒に現在進行形で感染している患者さんに出会ったのは医師になって10年ぐらいたってからのこと。大学病院では梅毒の患者さんは皮膚科に紹介するのですが、梅毒の診療経験のある皮膚科の医師を探すのが大変なほどでした。

ところが、2011年ぐらいを境に梅毒の患者数が急増します。毎年の患者数が600~800人程度であったものが、18年には7000人に増加。報告が漏れているものも含めればもっと多いと思います。

では、この10年ほどで急に日本人の貞操観念が崩壊して梅毒が流行したのでしょうか? 一部の梅毒の専門家の間では、おそらくインバウンドで持ち込まれたのだろうと言われています。

ここ2年は若干減少しているものの、もはや梅毒は過去の病気ではなくなってしまいました。感染しているかどうかは採血(血液検査)で調べます。梅毒は検査から治療まで全て健康保険が使えます。自覚症状もわかりにくいため、心配な性行為をされた場合には検査を受けてもらえればと思います。

☆たかはし・りょう 神奈川県出身。2003年日本医科大学卒業。日本泌尿器科学会指導医・専門医。日本医科大学付属病院嘱託医。ED、早漏、AGAなどをはじめ、前立腺がんなど泌尿器科にまつわる疾患全般を扱う動坂下泌尿器科クリニック(東京・文京区)院長。

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