メンタル崩壊・大坂なおみにテニス界から「一時引退」「バスケ転向」勧める声

全米オープン3回戦で敗れた大坂なおみうつむいてコートを後にした(ロイター=USA TODAY Sports)

ここから女王はどこへ向かうのか。女子テニス世界ランキング3位・大坂なおみ(23=日清食品)は連覇を狙った4大大会の全米オープンで3回戦敗退。試合中に怒りを爆発させて警告を受けると、試合後は涙で謝罪して休養を示唆した。メンタルの崩壊が露呈したことで、テニス界からは一時的な「引退案」が浮上。さらに他競技への転向を勧める声も上がっている。

心の乱れは明白だった。世界ランキング73位のレイラ・フェルナンデス(カナダ)との3回戦で、大坂は試合の流れが相手に傾くとラケットを2度もコートに叩きつけ、受け取ったボールを観客席に打ち込む暴挙。審判から警告を受けると、試合後は「子供のようだった」「申し訳なかった」と謝罪しつつ「次に出る大会は決めてない。少し休養したい。しばらくプレーしないかも」と話した。

5月の全仏オープンは棄権して〝うつ状態〟に悩んでいたことを告白し、東京五輪まで休養した。それだけに周囲からは心配の声が上がっており、元世界ランク4位のジェームズ・ブレーク氏はツイッターで「あなたの並外れたテニスを再び見たいのはもちろんですが、何よりもあなたの幸せな姿を見たい」と長期休養に理解を示した。

一方、ジュニア時代から大坂を知るDAZNテニス中継の解説者・佐藤武文氏は「今年いっぱい休養して、来年1月の全豪オープンで復帰するのが理想です」とした上で「長いキャリアを考えると、一度テニスをやめてリフレッシュするのもいいと思います」と提言する。これは決して非現実的な選択肢ではない。

実際、4大大会5回優勝のマルチナ・ヒンギス(スイス)、元世界女王のキム・クライシュテルス(ベルギー)、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)らは引退した後に現役復帰。佐藤氏は「本能的にテニスをやりたい!って思うまでコートを離れれば、戻って来た時に純粋にテニスを楽しめると思います」とメリットを力説した。

さらに別のテニス関係者からは一時的にバスケットボール選手への〝転向〟を勧める声も上がっている。「大坂はバスケが大好き。気分転換になる」(関係者)という理由だ。欧米では学生時代から複数のスポーツを掛け持ちする文化があり、他競技とのクロストレーニングを実施するプロ選手は多い。

世界ランク1位のアシュリー・バーティ(オーストラリア)は2014年秋、勝利へのプレッシャーやメディアとの関係性に悩んでテニスを離れ、地元のクリケットチームでプレー。カムバックした後に4大大会制覇、世界1位に輝くなど大成功した。今の大坂と状況が酷似しているだけに、佐藤氏も「他の世界を見ることは賛成です。必ずプラスになるはずです」と期間限定の転向に賛同している。

大坂は実際にバスケの練習をしていた時期があり、本人は「父がバスケの経験があり、いいクロストレーニングになると言われた。公園のコートで練習していました」と話している。オフはNBAを生観戦し、選手とも交流。バスケ界のレジェンド、故コービー・ブライアントさんを心からリスペクトしていることも広く知られている。

自分を見失い、精神的なリセットを求めていることを考えると、バスケ転向は単なる〝絵空事〟ではなさそうだが…。女王の今後の動向に注目が集まる。

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